『地域の危機・釜石の対応』合評会の記録
東京大学社会科学研究所と危機対応研究センターは、2021年6月27日(日)午後1時から5時30分にかけて、ZOOMウェビナーを用いて、オンラインで東大社研・中村尚史・玄田有史編『地域の危機・釜石の対応』(東京大学出版会、2020年)の合評会を開催しました。
この合評会は、危機対応学・釜石調査の研究成果である『地域の危機・釜石の対応』を、多様な視角から検討することを通して、釜石市民をはじめとする一般の方々とともに地域の危機について論じ合い、理解を深めることを目的としたセミナーでした。セミナーでは、第一部として編者の一人である玄田氏の司会で、各著者が自ら執筆した章のポイントをわかりやすく紹介しました。報告した著者は以下の通りです。
中村尚史(はしがき、序章、第8章(代読))、佐々木雄一(明治学院大学、第1章)、宇野重規(東大社研、第2章)、荒木一男(福井県、第3章)、竹内直人(京都橘大学、第4章)、佐藤慶一(専修大学、第5章)、高橋陽子(労働政策研究・研修機構、第6章)、橘川武郎(国際大学、第7章)、飯田高(東大社研、第9章)、田中隆一(東大社研、第10章)、西野淑美(東洋大学、第11章)、梅崎修(法政大学、第12章)、竹村祥子(浦和大学、第12章)、吉野英岐(岩手県立大学、第12章)、高橋五月(法政大学、第13章)、佐藤由紀(玉川大学、第14章)、玄田有史(終章)
続いて第二部では、司会をもう一人の編者である中村が引き継ぎ、枝見太朗氏(富士福祉事業団理事長)、五百旗頭薫氏(東京大学大学院法学政治学研究科・教授)、佐々木勝氏(釜石市総務企画部長)のお三方に、それぞれの視点から有益なコメントをいただきました。その上で、各著者がコメントに関連したリプライを行い、討論者を交えて議論しました。ただ、報告者の人数が多かったこともあり、フロアーからいただいたコメントやご質問に十分にお答えする時間がなかった点が残念でした。
このセミナーには48人の方々にご参加いただき、4時間以上にわたる熱心な議論が繰り広げられました。その議論は、釜石の現状をふまえつつ、地域の危機をどのようにとらえ、今後の対応につなげていくかという、示唆に富んだ内容でした。記録とならんで「記憶」から未来に向けた希望や危機対応をとらえる方策の模索を深めるべきといった問題提起や、「小ネタ」と「大ネタ」の間に「中ネタ」という概念を考えてみたらどうかという提案、人口減少という慢性的な危機には、やはり他の危機とは異なる向き合い方が必要ではないかといった指摘など、今後の研究につながるヒントが数多くちりばめられていたと思います。
長時間のセミナーにお付き合いいただいた皆さまに、深く感謝しています。そして今回も、釜石市役所の皆さまや、危機対応研究センター事務局・三浦美保子さんには、セミナーの準備や、実施など様々な面で多大なご協力をいただきました。いつものことながら、心からお礼を申し上げます。
(文責・中村尚史)