第14回危機対応学トークイベント報告

2021年11月16日

2021年1113()に、第14回危機対応学トークイベント「地域課題の解決に取り組む団体を応援する仕組みづくり」(主催:危機対応研究センター)を、釜石会場(釜石市役所会議室)と東京や京都など各地をオンラインで繋ぎ、開催いたしました(参加者計31名:釜石会場7名+オンライン24名)。前回に引き続き「釜石ふるさと寄附金(地域社会の課題解決に取り組む団体指定寄附)」の指定団体の代表の方にゲストとしてご登壇頂きました。

イベントのはじめに、まず釜石市役所より「釜石ふるさと寄附金」の仕組みについて紹介があり、その後、「釜石ふるさと寄附金」の指定団体である「海と子どもの未来プロジェクト実行委員会」代表の佐藤奏子さんと「NPOおはこざき市民会議」理事長の佐藤啓太さんに現在の取組をご発表して頂きました。その後、発表者のお二方と、モデレーターの玄田有史(東京大学社会科学研究所教授)、中村寛樹(東京大学社会科学研究所准教授)でトークセッションを実施しました。

「海と子どもの未来プロジェクト実行委員会」では、「東日本大震災の影響により、しずかに加速する『海離れ』をとめよう」、「ふるさと三陸に誇りをもち、海辺文化をつなぎ自然や 海への愛情と『生きる力』を育もう」、「それらを通じ、釜石の『新たな海辺の復興地域づくり』に寄与しよう」を目的に、「海あそびワンデイキャンプ」などの事業に取り組んでいます。佐藤奏子さんの発表では、豊富な写真でご発表頂き、写真の中の参加者の笑顔など本当に楽しみが伝わる事業紹介でした。また、「NPOおはこざき市民会議」は、「釜石市箱崎半島部の100年先を見据えた安全安心で、地域資源を活かした持続可能なまちづくりを目指す」をミションに、活動しており、「漁業の学舎(うみのがっこう)推進事業」や「特産品の開発と販売促進事業」、「防災教育とアーカイブ事業」を実施しています。佐藤啓太さんの発表では、事業の様子を写真や動画でご紹介頂き、今後の展望として、「ハード面の整備が完了し、新たな観光施設が整備されるなど、地域の様子は様変わりし、多くの客層が訪れる地域地盤ができてきた。その中で、漁業体験や特産品販売などを通した担い手育成・地域の魅力発信を行うことで、地域の漁業が活性化し、地域の海産物の価値が改めて見直され、漁師や地域住民が地域の漁業への誇りを強くする」というお話がありました。

トークセッションでは、佐藤奏子さんと佐藤啓太さんへの質問だけでなく、佐藤啓太さんの今後の展望に関するお話などを受けて、「事業の継続」や、「無理をせずに楽しくやる」ことの重要性などについて議論がありました。その中で、玄田先生の提唱されている「小ネタ理論」に関して、発表者のお二人からもモデレーターに質問やコメントを頂くなど、盛り上がったトークセッションとなりました。参加者へ行った事後アンケートにおいても、「地域を活性化するには、そこにいる人たちが楽しいと思う何かが大事であり、楽しくなるには小ネタが大きな役割を果たす。小ネタは見つけるものではなく、自分で作り出していくもので、小ネタを増やしていくには一人の人間に注目することだと教えて頂きました。玄田先生は希望学の調査研究の過程で八幡さんを通してそのことを学ばれたとおっしゃっられましたが、先生がおっしゃっている小ネタの意味が少し理解できました。」や「和気藹々としたトークから釜石の活気を感じられました。聞いていて楽しかったです。」など、トークセッションに関するご感想を頂きました。

アンケートにおける参加者の方々の感想では、他にも、「このトークイベントは、釜石に関係する具体的地域の活動を通じて、そこから問題を発見し、その問題の背景に何があるか、どうとらえていけばよいか、そして考えられる今後の取り組みの方途を発題者の目線で考えようとしているようで、非常に勉強になります。問題を見つけるだけでなく、その問題を深く掘り下げ、地元の担当者の目線に立って話しを展開してくださっているので発第者の方にとっても聴いている人にとっても啓発されると思います。」というご感想や、「三陸ブルーさんの海体験イベントは多くの団体が連携して作り上げている釜石らしさあふれる魅力的なもの。もう商品として立派に成り立つのではないでしょうか。事業費についてのお話はなかったと思っていましたが、台所事情はいかがなのでしょうか。」というご意見がありました。今回の限られた時間のイベントでは十分にご紹介できなかったトピックもあり、これらの貴重なご意見を、今後の参考にさせて頂きます。参加者および関係者の皆さまに、あらためて深く感謝申し上げます。

(文責・中村寛樹)