第10回危機対応学トークイベント報告
10月18日(日)、釜石市民ホールTETTO会議室と東京、福井、新潟など全国各地をオンラインで繋いだハイブリッド方式により、危機対応研究センター主催によるトークイベント「感染症拡大下の国・県・市町村連携:: ポスト・コロナへの展望」を開催しました。
今回の話題提供者は、元東京大学社会科学研究所准教授で、現在は福井県産業労働部創業・経営課長の荒木一男氏です。モデレーターは玄田有史(東京大学社会科学研究所教授)と中村尚史(東京大学社会科学研究所教授)が務めました。なおもう一人のゲストとしてお招きする予定であった宇野重規氏(東京大学社会科学研究所教授)は、諸般の事情で今回は参加できなくなりました。
冒頭で荒木氏から「感染症拡大下での政策の意思決定: ポスト・コロナへの展望」と題した、福井県におけるマスク事業や中小企業への休業要請協力金を事例とした政策の意思決定に関する力のこもったご報告をいただき、フロアを交えた白熱した議論が展開されました。
とくに興味深い論点としては、新型コロナウィルス感染症の拡大という、刻一刻と変化する危機状況のなかで、必要とされる時間軸によって行政の対応が変わってくるという点です。マスク事業のようにスピードが求められる施策においては、トップダウンの意思決定も必要ですが、中小企業対策のように持続的な支援が必要な施策では、ボトムアップによる長期的な視野を持った施策が不可欠なのではないかという論点は、今後の地域における危機対応を考える際に示唆的だと思われます。
本来、第10回危機対応学トークイベントは、8月8日に釜石で実施されるはずでした。しかし、新型コロナウィルス感染症の急拡大にともない、10月に延期され、しかも対面とオンラインを組み合わせたハイブリッドの形態での開催となりました。イベントの開催自体が危ぶまれる難しい局面で、その実現に向けて様々な可能性を探り、献身的な努力を惜しまなかった釜石市と東京大学社会科学研究所スタッフの方々に、心から感謝いたしております。
今回の参加人数は、オンライン参加29名、TETTO会場参加12名の計41名です。これはこれまでの本トークイベントでも、最も多い参加者数のひとつです。トークイベントの新しい挑戦にご参加いただいた全ての皆さまに、あらためて深くお礼を申し上げます。
(文責・中村尚史)