東北大学小野田研究室×危機対応学 第2回意見交換研究会の記録

2018年12月28日

 年の瀬も押し迫った12月26日、東北大学小野田泰明氏の研究室(大学院工学研究科都市・建築学専攻建築計画研究室)と、危機対応学釜石調査チームとの、2回目となる意見交換研究会が開催されました。小野田研究室からは、前回に続き小野田泰明氏、佃悠氏がご参加下さいました(お二人については第1回目の意見交換会の記事をご覧下さい)。危機対応学釜石調査チームからは、前回からの玄田有史氏(東京大学)、竹村祥子氏(岩手大学)、吉野英岐氏(岩手県立大学)、石倉義博氏(早稲田大学)、西野淑美氏(東洋大学)、大堀研(東京大学)に加え、 福井県庁から大学に転じ釜石調査チームにもご参加頂いている竹内直人氏(京都橘大学)、荒木一男氏(東京大学)のお二人が、今回から新たにご出席下さいました。

 研究会は、その竹内氏と荒木氏による震災後の釜石市行財政に関する発表から始まりました。竹内氏からは、「機能ヒエラルキー(正式な職階・肩書きとは別に、実力に基づき穏やかに形成されるヒエラルキー)」と「ランクヒエラルキー(正式な職階・肩書き)」の、組織の中の二つのヒエラルキーという観点が提示され、震災後に機能ヒエラルキーが優位となった状況が報告されました。荒木氏は釜石市財政を分析し、現状が危機かどうかは客観的には評価が困難であり、危機的状況が到来するとしてもそれに対応しうる能力が備わっていることが重要と指摘しました。さらにそうした危機対応能力と「ブリコラージュ(集められたものを手がかりに不確かな状況に対応しようとすること)」概念との対比可能性が説明されました。

 その後は、前回から参加しているメンバーからの発表となりました。継続メンバーには、前回に話題となった「2012年の出来事」というミニ・テーマが設定され、吉野氏からは2012年に開始された「釜石市災害公営住宅入居者選定方法等検討会」についての紹介があり、住宅再建に関連して討議の場が多数設定されたことが報告されました。竹村氏は釜石市の震災前後の世帯変化を分析し、「その他の親族世帯」が顕著に減少、「単独世帯」が顕著に増加していることを指摘しました。小野田氏からは復興都市計画事業の全般についての説明があり、津波復興拠点整備事業の難しさや、フロントプロジェクト1に関する2012年頃の行政の多大な努力について触れられました。また佃氏からも、震災後から2012年度までの復興都市計画事業の詳細が紹介されました。大堀は、2012年に設立されたNEXT KAMAISHIについて、その設立経緯を説明しました。石倉氏・西野氏は、両氏が震災後毎年聞き取りを行っている釜石市A町内会を含む地区を巡る2012年の行政の動きを整理し、住民の住宅再建意向が揺れていた時期であるとの考察を示しました。

 前回同様に玄田氏の司会のもとで活発な意見が取り交わされ、予定を1時間も延長したほどでした。今回は行政についての発表・言及が多く、小野田研究室で進めてこられた組織体制と復興事業との連関についての考察が、改めて重要と認識されました。また住民参加・民意調達をめぐっても議論され、非常時における住民参加の正統性とコストの二律背反や、政治的な意思の行政需要への置き換え、などの論点が検討されました。

 多様な分野の研究者による意見交換は参加者にとって良い機会となっており、第3回も是非という話となりました。「今度は福井県で」との話も出ましたが、果たして実現されますかどうか。

(文責・大堀 研)