第9回ワークショップ:民主主義を測る--主要な国際比較指標とその妥当性--Measuring Democracy: Cross-National Indices and Their Validity
報告者:粕谷 祐子 氏 (慶應義塾大学/ V-Dem 東アジアセンター)・森 浩太 氏(V-Dem 東アジアセンター)
日時:2022年1月18日(火)15:00~16:40
場所:オンライン(Zoomミーティング)
対象:一般公開
報告要旨:「民主主義」は社会科学において最も重要な概念の一つであり、様々な観点から研究されてきた。一国の政治体制としての民主主義研究においては、各国の政治が民主主義的であるレベルを測定する国際比較指標がここ数十年の間で複数開発されている。これまで、これらの指標の特徴を分析・比較する研究が多くなされてきたが、そもそもこれらの指標が「民主主義」を適切に測定しているのかどうかという「妥当性」の問題については、ほとんど 分析がない。このような状況をうけ、本報告では、主要な国際比較民主主義指標であるフリーダムハウス、LIED (Lexical Index of Electoral Democracy)、ポリティ、V-Demの選挙民主主義指標(EDI)及び自由民主主義指標(LDI)の測定妥当性に関して筆者らが現在進めているプロジェクトを紹介する。 報告では、まず、これらの指標が形成されるに至った歴史的・政治的背景と、それぞれの指標が測定を目指している概念の特定を行う。これをもとに、測定妥当性に関する2種類の分析を行う。第1が、民主主義と非民主主義を分ける閾値の妥当性である。ここでは、フリーダムハウス、ポリティ、EDI、LDIに関して、一般的に使用されている主要な2値指標(BMR, CGV, GWF)をベンチマークとして利用し、これらの閾値がシュンペーターに代表される民主主義のミニマルな定義よりも高い民主主義レベルで設定されていることを示す。第2に、フリーダムハウス、ポリティ、LIEDの測定妥当性を検討する。ここでは、V-Demデータベースにある基礎変数を各民主主義指標の構成要素のプロキシー(代理変数)と設定し、回帰分析・機械学習手法を用いて、これらの基礎変数がどの程度各民主主義指標の構成要素と相関しているのか検討する。