ワークショップ

第2回ワークショップ:「科学的実在論と国際関係理論:Scientific Realism and Quasi-intervention in Social Sciences; the case of "audience costs" in international crises」

報告者:保城広至(社会科学研究所)

日時:2021年5月18日 15:00‐16:30

場所:オンライン開催

対象:一般公開

報告要旨
 科学によって、われわれはいつかその真なる姿を明らかにすることができると主張する科学的実在論(Scientific realism)に対して、科学的反実在論(scientific anti-realism)は、科学によっても、われわれはいつ真なる姿を明らかにしたかを言うことができないと述べる。このような論争――科学的実在論争――は、決着がつかないまますでに一世紀にわたって続いている。本報告の目的は、社会科学における科学的実在論はどのように論じることが可能かを探ることにある。事例として本報告は国際関係論の中心理論の一つである観衆費用理論(audience costs theory)をとりあげ、科学的実在論の一つである実体実在論(entity realism)と、当該理論の関係を論じる。実体実在論とは、十分コントロールされた実験の場合のみ、理論的対象(実体)の実在性を主張する立場であり、他方で観衆費用は国際危機における敵国のresolve (戦争をする決意)を判断する一つの根拠である。本報告では、観衆費用が存在するかどうかをめぐる研究、特にサーベイ実験による研究の変遷を紹介し、実体実在論との関係を検討する。結論として、観衆費用理論は、実体は真であるが理論は偽である可能性が示される。