東京大学社会科学研究所

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所長の挨拶

研究所長からのご挨拶


社会科学研究所長
佐藤岩夫

 東京大学社会科学研究所(社研)は、第二次世界大戦の敗戦後に東京大学を再生するための最初の改革として、当時の南原繁総長のイニシアティブよって、1946年8月に設置されました。「社会科学研究所設置事由」(1946 年3 月起草)によれば、戦時中の苦い経験の反省のうえにたって「平和民主国家及び文化日本建設のための、真に科学的な調査研究を目指す機関」が構想され、日本における社会科学研究の面目を一新させることが、社会科学研究所を設置する目的とされました。以来、本研究所は、このミッションに従い、日本の社会科学研究の発展に貢献する活動を行い、2016年度には創立70周年を迎えました。

 本研究所の特徴は、法学・政治学・経済学・社会学の4つのディシプリンにまたがる総合的な社会科学の研究所である点にあります。本研究所に所属するスタッフ各自がそれぞれの専門分野で優れた研究を行うことは当然ですが、研究所全体としては、社会科学の総合知を活かし、とくに以下の点において特徴ある活動を行っています。

 第1は、研究所の多様な分野のスタッフが参加して実施される共同研究の推進です。その代表は、1964年以来現在に至るまで継続的に実施されている「全所的プロジェクト研究」(以前は「全体研究」といった時期もあります)です。そのテーマは、最初の「基本的人権」(1964-1968年度)以後、「戦後改革」(1971-1975年度)、「ファシズム期の国家と社会」(1975-1980年度)、「福祉国家」(1981-1985年度)、「転換期の福祉国家」(1986-1988年度)、「現代日本社会」(1987-1992年度)、「20世紀システム」(1994-1998年度)、「失われた10年?—90年代日本をとらえなおす」(2000-2004年度)、「希望学(希望の社会科学)」(2005-2008年度)、「地域主義の比較研究」(2005-2008年度)、「ガバナンスを問い直す」(2010-2013年度)と続き、2015年度からは、「危機対応学(危機対応の社会科学)」が進行中です。この全所的プロジェクト研究は、一つの研究機関がテーマや視角を変えながらも日本社会を長期にわたり継続的に観察し、その折々の日本社会の特徴を浮かび上がらせていることから、「戦後日本社会の定点観測」とも評されています。さらに、この全所的プロジェクト研究のほかにも、本研究所では、各種の共同研究が活発に行われています。

 第2は、社会科学研究のインフラの構築です。この活動の中心にあるのは、本研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターが運営するSSJデータアーカイブ(SSJDA)です。SSJDA は、社会調査の個票データの収集と学術目的の利用のための公開を行っており、現在、公開データセット数は 2,000を超え、年間のデータ利用研究者数も 3,000 人を超えるなど、社会科学分野では日本最大のデータアーカイブとなっています。社会調査・データアーカイブ研究センターは、2010年度に、全国共同利用・共同研究拠点に認定され、SSJDAの運営のほか、パネル調査の実施や二次分析研究会の開催、国際的な社会科学データアーカイブ・ネットワークとの連携等の活動を行っています。

 そして第3に、量的および質的に充実した調査研究活動です。社会科学研究所の発足以来現在に至るまで、各種の調査が途切れなく続けられており、現在も、釜石市や福井県などで実施されている「地域密着型調査」、社会調査・データアーカイブセンターが実施する、働き方とライフスタイルの変化に関する大規模な「東大社研パネル調査」、最高裁判所をはじめとする全国の裁判所の協力を得て実施している「労働審判制度利用者調査」、さらに中国,韓国,東南アジアなどにおける「海外調査」などが精力的に実施されています。最初にのべた地域密着型調査について付言すれば、地域を単に調査対象としてのみとらえるのではなく、地域の課題を地元の自治体や住民とともに考え、地域から新たな学術の可能性を生みだすという点に重要な特徴があります。

 そのほか、本研究所では、Oxford大学出版局との協力のもとに英文の社会科学専門誌Social Science Japan Journal(SSJJ)を刊行するなど、日本の社会科学研究の成果を世界に発信するとともに、世界の社会科学的日本研究ネットワークにおけるハブとしての役割を果たしています。

 本研究所は、今後も、これらの活動をさらに発展させ、社会科学の総合知を活かして学術および社会の発展に貢献していく所存です。引き続き皆さまのご支援をお願するとともに、本研究所の研究成果にご期待ください。