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研究

『社会科学研究』

刊行予定の特集—第65巻第2号
特集:「グローバル化と公法・私法の再編」

編集責任者:藤谷武史

『社会科学研究』編集委員会では、上記特集テーマに関連する論文の投稿を広く募集いたします。投稿資格は、関心のある研究者あるいは大学院生の方々であれば研究所の内外を問いません。下記の「特集テーマ趣旨」および「投稿要領」を良くお読みの上、奮ってご投稿下さい。

特集テーマ趣旨

 グローバル化は法の概念や、法の在り方を変化させつつある。顕著な変化として、第一には、従来の国家法の相対化が挙げられるであろう。これには、国連やEU、WTOなどの国際機関による二次法形成の増大によって生じる場合と、lex mercatoriaや多国籍企業のネットワークにおける私的自治規範の増大によって生じる場合がある。後者の自治的規範の中には、国際的なNPOの活動を支える規範も含まれる。これらの非国家法の影響力や実効性の増大により、国家主権による一体的統治という従来の法の姿はもはや自明なものではなくなりつつある。

 第二の顕著な変化として、法の諸機能領域への分化を挙げることができる。従来の国家法においては、憲法を頂点とし、立法府により定立された権利義務の一般的体系としての法が観念されたが、現在では法は経済、環境、食品や製造物の安全管理、インターネット、スポーツなどの問題領域に分かれ、各領域の課題に機能的に対処するための規制手段として断片化する傾向がある。このような変化は、国内での行政国家化における現象としても指摘されてきたが、国境を越えた共通問題領域の発生に伴い、とりわけグローバル化に伴う現象として進行しつつあると言えよう。

 本特集では、グローバル化がもたらすこのような法の変化について、二つの理論的視点を設定し、検討を加えることとしたい。第一の視点は、グローバル化の下での公法と私法の関係の再定義である。国内法の文脈では、民主的正統性に裏付けられた立法政策の問題として公法(行政法)と私法(民事法)の協働・役割分担を論じる思考様式が主流になって久しいが、グローバル化の下、国際機関が形成する規範や私的自治規範を直ちに国内法秩序に接合することについては、法の実効性の観点からは要請されるものの、公法が重視する民主的正統性の観点からは警戒される。他方、国家法の相対化と法の機能主義的断片化の現象は、私法の国家法秩序からの自律性を強調する議論の復権をもたらしつつあるが、国際取引や金融規制の実態をつぶさに観察すれば、むしろ経済自由化への強い流れ自体がある種の公法の産物ということも可能であり、グローバル化における公法と私法の関係は、「協働」という言葉では片付けられない、錯綜した様相を呈している。そこで、これらの点を、理論的に整理して示すことが、本特集の第一の課題となる。

 第二の視点は、領域分化し断片化された法が、矛盾を来すことなく相互に調和する方法を与える理論枠組みの探求である。主権国家における法の体系的統一という思考が相対化される中、改めて国際法と国内法の関係という古典的な問題に立ち返ることも含めて、多様な領域に跨がる法や規制を接合し調和させることは、いかにして可能か。国際的正義・法の支配・よきガバナンスなどの統一的原理を探求すべきか、むしろ多元主義に活路を見出すのか、そのいずれにしても初歩的な理論的整理すらまだできていない状況にある。本特集では、実定法と法哲学・法理学、国内法と国際法の視点の交わるところに、これらの論点を整理し、今後の理論的検討の見通しを示すことを目指したい。

招待執筆者(五十音順)

浅野有紀 (同志社大学)
大西楠 (駒沢大学)
興津征雄 (神戸大学)
小畑郁 (名古屋大学)
那須耕介 (京都大学)
原田大樹 (京都大学)
藤谷武史 (東京大学)
村西良太 (九州大学)
横溝大 (名古屋大学)
この他、外部から広く公募する。

投稿要領

 投稿原稿は400字詰め原稿用紙換算60枚を限度とします(図表を含む)。なお、投稿論文の締切は2013年9月30日(月)とします。論文原稿2部を本誌編集事務(東京大学社会科学研究所研究・企画協力係)に郵送願います。ワープロ原稿の場合はプリントアウトした原稿2部と使用機種を明記したフロッピーディスクを郵送願います。電子メールの添付ファイルで提出する場合(送付先: kenkyu-kikaku@iss.u-tokyo.ac.jp)は、MS−WORDあるいはTEXをPDF化した原稿を添付し、別途プリントアウトした原稿を2部提出願います。投稿者の資格は問いません。編集委員会の責任で査読の上、採否を決定します。採否の決定は通知いたしますが、原稿は返却しませんので、ご了解願います。

お問い合わせ

東京大学 社会科学研究所

紀要編集委員会/総務チーム研究協力担当

〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1

Tel 03-5841-1855(研究協力担当)
Fax 03-5841-4905
Email kenkyu-kikaku@iss.u-tokyo.ac.jp

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