東京大学社会科学研究所

東京大学

MENU

研究

 

研究会・セミナー案内 (今後の開催予定)

2025年2月18日(火)開催

日時 2025年2月18日(火) 15時~16時40分
場所

オンライン(Zoom)

題目 日本武道にみる在来知の普遍性:新陰流と柔道を事例にして
報告者 中嶋哲也(茨城大学)
報告要旨

 本年度の社会科学研究所では在来知と普遍知を意識したテーマが組まれているようである。そこで本発表では武道から日本における在来知の普遍性について考えてみたい。

 今日、武道は世界中で実践される日本発の身体文化である。在来文化が海外伝播するとき、当該地域の社会的・歴史的文脈に組み込まれて展開される。そのため、武道の普遍性、あるいは武道の普遍化を検討するためには、海外の人々が武道をいかに受容したのかを問うことが求められるだろう。近年の武道研究は後者の主題にしたがって海外(とりわけ欧州とアメリカ大陸)における武道の受容過程に焦点を当てた研究成果を豊かに蓄積しつつある(坂上康博編著『海を渡った柔術と柔道』,青弓社,2010年、藪耕太郎『柔術狂時代』,朝日新聞出版,2021年など)。しかし発表者はこれまで日本国内の武道の研究に取り組んできており、海外伝播・受容については確たる見識を持ち合わせていない。

 そこで発表者は、武道の普遍性を問う試みを国内事例から検討したい。武道の普遍性を主題とする研究では、従来、その精神文化に注目する傾向があったが(源了圓『型』,創文社,1989年、源了圓編『型と日本文化』,創文社,1992年、寒川恒夫『日本武道と東洋思想』,平凡社,2014年)、武道の精神文化も身体実践を離れて存在しているわけではない。そのため、発表者は武道の精神文化を歴史学的に考察するだけではなく、各武道の稽古に即して検討する必要があると考えている。

 この方面の先駆的研究としてオイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』が挙げられるが、本発表では弓道ではなく新陰流と柔道を主な検討対象とする。これらは私自身が実践面からも文献調査の面からも研究してきた武道である。そのため、他の武道種目・流派に比べれば、考察に資する知見を持ち合わせているので、検討対象とした。また、対象の違いとともにヘリゲルとは異なる角度から武道の普遍性を検討することになるだろう。

 発表者が武道の普遍性を検討する上で補助線にするのは社会学者ノルベルト・エリアスの「文明化」の議論である。エリアスの文明化論は概して言えば、暴力の中央集権化とともに、人々の間から感情的な振る舞いが不快なものとして締め出されていく、あるいは自己抑制されるようになる過程である。自己抑制は人々の日常に緊張感を強いるが、そうした緊張感を適度に解放する機会としてエリアスはスポーツを捉えている。暴力にせよ自己抑制にせよ、あるいはスポーツにせよ、武道にとっては親和性の高い概念である。これらの概念を補助線にしながら、武道が提示する「文明化」の在り様、すなわち武道の普遍性を考察してみたいと考えている。

使用言語 日本語
参加申込

所外の方はこちらのお申込フォームからお申込ください。自動返信メールをもって受付完了とさせていただきます。
(申込締切日:2月17日正午)

問合せ先

社会科学研究所 庶務担当(shomu(at)iss.u-tokyo.ac.jp) 「(at)」を「@」に変更の上、メールを送信してください。

TOP