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『社会科学研究』第60巻第2号
日本とドイツにおける介護保険制度成立の政策過程
How Policies Differ : Long-Term-Care Insurance in Japan and Germany
ジョン・クレイトン・キャンベル/John Creighton Campbell
Keywords: 介護, 公共政策, ドイツ, 政策決定過程, 社会保障,
抄録
本稿は, 政策決定過程の分析による公共政策の比較研究である. ドイツと日本の類似点は, 大規模な長期ケアプログラムの実施, 社会保険モデルで適応(日本の場合は, 最終的に社会保険モデルとなった), という2点である. 一方, 両国のプログラムの重要な相違点は, 日本のプログラムがドイツよりも大きい, ドイツの制度には厳格な財政制限がある, ドイツには家族介護者への現金給付も行っているが日本は公的サービスの提供のみである, という3点である. 説明モデルとしては, 政策課題の相違の違い, 権力のバランスおよび他の政治的要因の違い, 歴史的レガシーの違い, 出来事がおきるタイミングなどの偶然による違い, の4点に着目した. 結果の一つとして, 日本の家族介護の伝統が家族介護者への現金給付に反対したように, 歴史的レガシーがわずかなものであることが明らかになった.
abstract
Public policies are compared through analysis of decision-making processes. Germany and Japan are similar in having enacted large-scale programs in long-term care, and in adopting a social-insurance model (eventually, in the Japanese case). The programs differ in important ways: the Japanese program is bigger, the German program has strict financial limits, Germany offers a cash allowance while Japan provides only formal services. An explanatory model looks to differences in policy problems, in balance of power and other political factors, in historical legacies, and in artifacts such as timing. One finding is that historical legacies can be subtle, as in Japan's tradition of family caregiving working against cash subsidies for family caregivers.
社會科學研究 第60巻 第2号(2009-02-03発行)
(更新日: 2012年 11月 2日)