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『社会科学研究』第58巻第2号
電力自由化とエネルギー・セキュリティ―歴史的経緯を踏まえた日本電力業の将来像の展望―
Historical Lessons for the Liberalization of the Electric Power Industry in Japan
橘川武朗/KIKKAWA Takeo
Keywords: 電力自由化, エネルギー・セキュリティ, 原子力発電, 電力業経営の自律性, 強靭なエネルギー企業,
抄録
最近の日本では, 「エネルギー・セキュリディの確保」を大義名分にして, 電力自由化に歯止めをかけようとする動きが目立ち始めている.エネルギー・セキュリティの確保が電力自由化の後退につながるのは, エネルギー・セキュリティの確保→原子力発電の重視→原子力投資を抑制する電力自由化の問題視→電力自由化の後退, という論理的連関が想定されているからである.このような想定は, 妥当なものだろうか.本稿では, 日本の電力産業の発展過程に立ち返って, この点を検証した.検証の結果, 電力自由化のいっそうの進展は, 電力会社による経営の自律性の再構築を促進し, ひいてはエネルギー・セキュリティの確保に資することが判明した.電力自由化の進展→電力会社による経営の自律性の再構築→電力会社の強靭なエネルギー企業への成長→エネルギー・セキュリティの確保, という論理的連関こそが強調されるべきなのである.つまり, 電力自由化の後退は, むしろ, エネルギーセキュリティを危うくするものだと結論づけることができる.電力自由化が原子力投資に抑制的な影響を及ぼす問題については, 原子力発電事業を9電力会社から分離し, 政策的支援を受ける専業会社に集中することによって, 解決することが可能である.エネルギー・セキュリティの確保のためには, 電力自由化をいっそう進展させることが求められている.
abstract
The purpose of this paper is to examine the process of the liberalization of the electric power industry in Japan and the recent setback of the liberalization. The liberalization of the Japanese electric power industry began in 1995, and progressed step by step until 2004. From a perspective making much of energy securities, however, the Japanese government intends to the perfect liberalization of the electric power industry scheduled in 2007 to be postponed. It asserts that the liberalization retard investments in atomic generation essential for energy securities. This paper criticizes the above argument by the Japanese government. Its conclusion is that the continuation of the liberalization of the electric power industry will rather make the Japanese energy securities better through creating strong energy companies retaining international competitiveness.
社會科學研究 第58巻 第2号(2007-02-02発行)
(更新日: 2012年 11月 2日)