東京大学社会科学研究所

東京大学

MENU

研究

『社会科学研究』第56巻第2号

90年代国際的ディスインフレ期の不況と経済政策選択―ドイツ,スイス,日本の景気低迷・政策対応と政策選択的視角の重要性―
Disinflationary Choices and Policy Reforms : Germany, Switzerland, and Japan Compared
樋渡展洋/HIWATARI Nobuhiro

Keywords: 比較政治経済, ディスインフレ政策, 金融財政政策, 財政再建, 社会保障改革,

抄録

本稿は90年代の日本の財政運営と社会福祉改革の比較分析のための枠組を提示する.政府のマクロ政策決定の国際経済的状況,政府に利用可能なディスインフレ的制度要因,政府の不況対応の政策経路により発生する政策課題の3点に焦点を当てた分析枠組とそれに基づく検証の結果,ドイツ,スイス,日本はディスインフレ的金融財政運営が80年代以来制度化されていたため,他のOECD諸国のような外因的ディスインフレ的政策転換を余儀なくされることはなく,その結果,財政再建や社会保障改革も,長期の経済停滞を経た今世紀まで遅延されたことを明らかにする.しかも,ドイツ,スイス,日本の財政・社会保障政策課題の相違は3国のディスインフレ的制度の違いより導出できるとする.このような分析は民主政市場経済の類型から各国の政策対応を説明する比較政治経済の通説的視角の問題点を照射する.

abstract

No OECD nation was spared from economic downturn in the early 1990s. Slow economic recovery and stalled fiscal and/or social security reforms of the "coordinated market economies" of Germany, Switzerland, and Japan are explained as a result of disinflationary institutions that allowed the three countries to forgo disinflationary policy shifts and delay subsequent reforms in fiscal reconstruction and/or social security. The differences in disinflationary institutions also explain why the three countries faced different reform agendas in the 2000s.

社會科學研究 第56巻 第2号(2005-02-07発行)

(更新日: 2012年 11月 2日)

TOP