東京大学社会科学研究所

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加瀬 和俊 著『集団就職の時代』高度成長のにないて手たち
青木書店 1997年 ISBN 4-250-97022-1 Aoki Library 日本の歴史 現代

本書は、日本の高度経済成長期、特に1955〜64年の10年間(昭和30年代)に限定して、農山漁村出身の新規中学卒業生が年少労働者として大都市に就職した過程を描いたものである。

この10年間は日本が後進国・農業国から先進国への仲間入りをした時期であったが、農村部に就職機会はなかったので、中学卒業生達は毎年、先生に引き連れられて就職のために集団で都市に移動してきた。この現象は「集団就職」と呼ばれたが、それは、学生服・セ−ラ−服の15才の中卒者達が、農山漁村から特別仕立ての「就職列車」で大都市に移動し、到着した上野駅には零細商店の店主達がのぼりを立てて出迎えに来ているというイメージであった。引き続く経済成長の下でこの現象はなくなり、テレビの普及によって都会的知識を詰め込んだ高卒者達が、旅行気分で都会に出てこられる時代へと移っていった。

本書で著者が訴えたかったことは、経済発展にともなう労働市場の拡大は、社会的な格差付けをともないながら進行したこと、そしてその際の選別基準として、この時期には、都市出身者か地方出身者かという事情が大きな意味をもっていたという事実である。日本的な終身雇用制からも年功制的賃金制度からも排除されていた彼等・彼女等は、都市自営業者として自立したり、中小企業の職工として自足する方向へ進み、大企業労働者とは異なるライフ・コースをたどっていった。

本書の構成は、まず序章において、昭和30年代の画期性をとらえるための前提として、昭和20年代の農山漁村における過剰人口の様相にふれた後、第一章で、農山漁村および農家子弟の側から人口と職業の移動を把握し、第二章では、企業側の採用のあり方と仲介役の職業安定所・中学校の役割にふれ、第三章では、大都市に就職した農村漁村出身の年少労働者達の生活と相互の連帯のあり方を検討している。

目次
序章
戦後の初期条件

ー昭和20年代ー
第1章
進路選択行動の変化
第2章
労働力需要の実態
第3章
地方出身者の都市生活
終章
まとめにかえて
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Created 26 August 1997
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