役立つ情報

編集者にアプローチする方法

注:以下に目を通していただければわかりますが、編集者にはそれぞれの好みもあり、一 つの決まったアプローチの方法というものはありません。強いて言えば、短いEメールに 本のプロポーザルを添付して送るのが一般的には良い方法でしょう。

グレッグ・ブリトン(ジョンズ・ホプキンズ大学出版局編集理事)

たいていの人は、端的な自己紹介のEメールを送ってその編集者が興味を持ってくれるか を打診してみるところから始めると思います。私はこのようなメールを一日に5通は受け 取りますが、その場で興味のないものは丁寧にお断りし、もっと詳しく知りたい場合は本 のプロポーザルを送っていただくようお願いしたり、私の質問を説明する少し長めのメー ルを返します。

既に本のプロポーザルをお持ちなら添付していただいて結構です。但し、私に連絡するた めだけにプロポーザルを準備してジョンズホプキンス大学出版会向けに手を加えたり、私 が興味を持ちそうだと思う同様の本も含めたりはしないでください。そのような手間をか ける必要は全くありません。時々このように手間をかけて大量のパッケージにしたものを 受け取けとることがありますが、こちらが興味を持てない場合はとても申し訳なく感じて しまいます。時間をかける前に一言聞いてほしかったと思うのです。あまり時間をかけな いで端的なメールを送ってください。他の編集者の方は違う意見をお持ちかもしれません が、以上が私の答えです。

ギータ・マナクターラ(マサチューセッツ工科大学出版局編集長)

私共へのアプローチの方法について少しお話しさせてください。MIT 出版局のウェブサイトには、他の大学出版会と同様に、本の募集採用担当の編集者のリストが掲載されていま す。サイトでは全員の氏名と担当分野、主な興味の対象について短いプロフィールを見る ことができます。私共のウェブサイトを是非ともご覧になっていただき、MITがどのような 分野の本を出しているか、どのような編集者がいるかなどの感触を得られてから、ご自分 の本の手短な説明を送ってください。編集者の一人を選んで、お書きになっているものを 説明して興味があるかを尋ね、同時にMIT出版会の他の編集者にアプローチするべきか 、MITは諦めて他の大学出版会にアプローチしたほうがよいかなど、なるべく早めに知ら せてもらえるよう依頼します。

次に、私共が求めているものについて説明させてください。私共が常に探しているのは、 有意義な方法で知識の進歩をもたらす本、または一般読者や学生の役に立つようなかたち に知識を統合する本です。オリジナルで、学識の高い本。何か重大なことを引き起こすよ うな注目せずにはいられないトピックを扱う本。優れた証拠に基づいて議論を展開する本 。専門家である著者の視点、それもこれまであまり表に出ることの少なかった著者の視点 を提供する本:これは外国人の著者、女性著者など、これまで、また現在も専門分野内で 出版する機会があまり得られなかったであろう著者を意味します。可能な限り広い読者層 に受け入れられるように書かれている本:これは私共が本をより多くの読者に到達する手 段としてとらえているからです。学術誌とは違い、本になると著者の専門分野を超えて広 く世の中に伝播することができます。ですので、私共のような本の出版と宣伝普及を支え る大きなインフラを是非ご利用していただき、広い読者層に貴方の本を届けてみませんか 。

最後に、私共では例の「ソーワットテスト(so what test) = だから何なの、何がポイントな の、に答えるテスト」に合格する本を求めていますので、この点はご興味のある方に別途 ご説明させてください。貴方のご研究はご自身にとっても専門分野の研究者たちにとって も重要であることは言うまでもありませんが、それを本にされる際は、その内容が専門家 以外のどのような層に意義があるか、何故意義があるかを念頭に置いてみるのも役立つと 思います。

MIT出版会や他の大学出版会にアプローチされる場合は、本の内容を端的に説明するよう にしてください。どの読者層を対象としているか、もし複数の読者層ならばすべて教えて ください。ご自分の本が、その分野ですでに出版されている文献にはこれまでなかった何 かを貢献、寄与するものであるかを指摘してください。ご自分の議論とその証拠を示し、 なぜ貴方がこのトピックを書くのに一番ふさわしい著者なのか、なぜMIT出版会がこの本 を出版するのに一番ふさわしい出版社なのかを述べてください。この本がどのような本の ジャンルに属するのか、このトピックで現在ベストの本を何冊か挙げ、ご自分の本がそこ に何を追加できるのか、これまで書かれたものとどのように違っているのかがわかるよう にしてください。

アン・サバリーシ (プリンストン大学出版局編集者)

私は本のプロポーザルの重要性を強調したいと思います。プロポーザルは、本の出版にお けるごく初期の段階で、これがどんな本で、何について書かれていているか、その理論的 根拠、著者の背景などを編集者が理解するための第一歩の手がかりになるばかりではなく 、この本に関する情報を同僚の編集者たちと共有する手段となるからです。私が推したい と思う本に出合った時、当出版会でその本の案を最初に持っていって話し合う場所はプロ ジェクト・レビュー・ミーティングになります。新規に提案されたものや新しい本のアイ ディアを話し合う週一のミーティングです。たいていは、担当編集者がその本の短いサマ リーを準備し、本のプロポーザルを出席者と共有します。同僚の編集者で私の分野以外の 募集採用を担当している人たちや本の販売とマーケティング担当者、その他この本の出版 を何らかの形でサポートすることになるスタッフも、ここでまず本のプロポーザルを見る わけです。プロポーザルは、最初の段階でその本に関する情報を全員に届ける役目を果た します。

時々本の原稿をそのまま添付して提出してくる人がいますが、最初にプロポーザルを提出 していただいた方が助かります。プロポーザルにはその本がどのように構成されているか 、なぜその本を書いているのか、どのような読者層を狙っているかなどが整理して書かれ ているからです。プロポーザルの作成という作業は、単に要求されている演習などではなく、我々編集者にとって真に役に立つものなのです。そればかりではなく、この本で何を 達成したいのか、誰に読んでもらいたいのかをを明らかにするこの作業は、著者自身にと っても役に立つものだと考えます。

本の出版を打診する際は、一部に編集者個人の好みという要素も入ってきますので、単純 にこうすればよいという答えはないと思います。ただ、初めての本の場合、プロポーザル を送るかどうか、今週の討論のなかで、最初に短い問い合わせを送って編集者にプロポー ザルを見たいか尋ねるやり方が出てきたと思いますが、私は最初からプロポーザルを受け 取る方を好みます。プロポーザルにはおそらく二段落ほどの本の描写がありますから、そ こを見てこれは私共では絶対に取り上げない分野であるなど、最初から答えがノーである ことを明らかにできるからです。しかし多くの場合、私はおそらく可能性はあると答えま すので、プロポーザルをお持ちなら最初から送ってください。

重要なのはプロポーザルの中身であって、形式ではありません。特定の出版社のテンプレ ートにきっちりと従う必要があるわけではなく、重要なポイントさえ押さえてあればよい のです。重要なポイントとは、その本の理論的根拠、本の短い描写、及びより長い詳しい 説明、本の構成のアウトラインなどです。中にはテンプレートの細かい部分に引っ掛かっ てしまい、本の理論的根拠や内容説明という最も重要な部分に十分な時間を割けなかった と思われるプロポーザルもあるのは事実です。

もうひとつ、特に初めての本の場合、過度にテクニカルなプロポーザルを受け取ることが よくあります。まるで博士論文委員会に提出するプロポーザルのようなものです。学術出 版社の編集者には博士号や修士号を持つ者もいますが、持たない者もいます。学術的な専 門知識よりは、出版にかかわる知識を多く持っている編集者もいます。もちろん我々はそ れなりの知識は持ち合わせていますし、担当分野で何が起きているかは基本的に把握した 上で最善を尽くしているのですが、編集者自身は学者ではありません。我々はあくまで出 版業者ですので、ご自分の専門分野について我々の方が良く知っているとは思わないでく ださい。我々の知識がかなり不足していることも多々あります。

ですから、その分野の専門家やご自分より上の人に向けて書かれたプロポーザルには効果 は期待できません。私はよく学部の学生、3回生か4回生向けに話すように書いてみるこ とを勧めています。ご自分の本が何であるか、何をしようとしているのかをシンプルな表 現で書いてください。テクニカルな用語を駆使しても編集者を感銘させることはできませ ん。編集者が理解に苦しむだけではなく、そのプロポーザルを共有する他の同僚たちにもポイントは伝わりません。