本のプロポーザルを提出する時点で、執筆はどの程度完成しているべきか。
グレッグ・ブリトン(ジョンズ・ホプキンズ大学出版局編集理事)
私のお気に入りの話をさせてください。一度学術的な会議に出ていた時に、一人の大学院生が私のところにきて言いました「博士論文のトピックを決めようとしているところなんですが、選択肢が二つあって、いずれは本にしたいと思っています。今ここで二つの本のトピックをお話したら、どちらを追及するべきか決めるのを手伝っていただけますか。」
私は何と素晴らしい質問なんだと思いました。彼女は本を出版したいというチェス盤上の先にある目的を見据えて、早い時期から編集者の助言を求めていたのです。私はどのような分野でも、「これは出版可能であるか」という質問を気軽に投げかけてみるのが早すぎる時期というのはないと、心から思っています。
すっかり書きあがった原稿を送ってきて「これにずっと取り掛かってきて、やっと今出来上がったので、見てください」ということが多々あるのですが、私はたいてい「どうして半分くらいのところで編集者と話をしなかったのか」と思ってしまいます。原稿はよく書けてはいるのですが、もし8%くらいの内容を配置換えしていたら、相当改善するのにと思うことが多いのです。
また、もし、この本の真の読者が誰なのかをよく考えていたら格段と素晴らしくなっていたはずで、この本は「たぶん出版したいとは思わない」の範疇から「絶対にイエス、これを出版したい」の範疇に格上げされたのに、と思うこともあります。編集者は出版の分野ではその専門家ですから、出版に向けて原稿を書き進める際には編集者の専門知識をできる限り使っていただきたいのです。
アン・サバリーシ (プリンストン大学出版局編集者)
最初の本で、一年から数か月以内にレビューできる原稿が完成するという状態ならば、編集者にアプローチしてよいと思います。短いメールの問い合わせや、出来上がっているプロポーザルを送ろうという時点で、本の完成は数年先という場合は、編集者に正式に連絡するにはやや早すぎると言えます。たとえ編集者が興味を持ったとしても、実際にレビューできる原稿がかなり先まで出てこない場合、何が起きるかわかりませんし、時間が経つうちに何かが変化するかもしれないからです。
編集者に質問するために連絡するのは全く構いませんし、ただ出版のプロセスを話し合うだけのために短いミーティングを求める人もいます。決まった答えはありませんが、一旦編集者に連絡をとり始めるには、原稿作成のプロセスは既に相当に進んでいるべきだと考えます。 つまり、編集者が「興味があります、もう少し見せてもらえますか」と言ってきたときに、「はい、二、三か月で原稿が出来上がります」「サンプルとして一・二章分今すぐに送れます」などと言える状態であることです。編集者が「大変興味があります」と言っているのに「お見せできるものが出てくるまで二・三年はかかります」ではあまり役にたちません。