東京大学社会科学研究所

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研究

社研セミナー

Arm's length relationship to science and society
科学と社会への関係性と距離感
佐々木彈(社会科学研究所)

日時:2021年9月14日(火)15時~16時40分
場所:オンライン(Zoom)
参加方法:所外の方は、こちらの申込フォームからお申込ください。前日までにZoomのURLを送付いたします。

報告要旨

 経済学を志し始めてから早くも四半世紀を超えるが、その間不断に考え続けてきた、如何にして社会に貢献すべきか、という基本的な問いに対し未だ納得の行く答を見出せていない。斯く申せば、己の不徳と菲才を棚に上げるな、とのお叱りを頂戴しそうだが、それでは社会科学とは才能に恵まれた功徳者たちだけの上級国民クラブなのか、と反問せざるを得ない。スポーツや芸術はいざ知らず、科学や学問は、運好く才人に生まれついた上流人たちだけの専売特許では決してないはずだ。

 しかも皮肉なことにこの四半世紀は、我が国の経済社会が停滞を続け、国際競争力を失い、諸外国の後塵を拝するに至った所謂「失われた」時代と綺麗に重なる。もちろん私自身も、その何層倍も有能で高名な先輩・同輩の社会科学者諸賢も含め、この間に何を欠いてきたのか、を省察すべき好機とも言えるのではないだろうか。

 誤解や軋轢を恐れずに直言すれば、科学とそれを担うコミュニティがそれ自体一つの産業として利益団体を形成し、真正な意味における人類社会の共益から微妙に乖離した内部価値と自己利害を追求するリヴァイアサンとして振舞っていることに問題の一端を私見する。換言すれば、科学者コミュニティ内で地位や評価の芳しい「優等生」の諸先生方を以てしても、真の社会的需要に必ずしも応えきれていないことが、失われた四半世紀として我々に警鐘を鳴らしていると見て取れよう。

 教授昇任後はや12年、次回のセミナー発表はおそらく定年前最終報告、つまりもう昇進も評価も終生無縁、というこのキャリアの最期にこそ果すべき使命、それは一口に言えば皆の嫌がる汚れ仕事、真に社会の為、世の為人の為にもかかわらず評価も尊敬もされない所謂「手柄にならない損な仕事」にこそ在るのではないだろうか。具体的詳細はここに書ききれないし、中途半端に紹介すると却って不必要な誤解を招きかねないので、当日(及び爾後定年まで)に譲りたい。


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