研究
社研セミナー
「家族環境と社会移動に関する計量社会学的研究」
三輪 哲(社会科学研究所)
日時:2015年 12月8日 15時00分-16時40分
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)
報告要旨
社会移動とは、社会の成員が社会的地位を移動させる現象をさす。なかでも親の地位から子の地位への移動は「世代間移動」と呼ばれ、脈々と研究伝統が築かれてきた。だが、世代間移動という現象が親と子という家族内で相互作用する行為主体を扱うものであるにもかかわらず、意外にも家族そのものを問う視点は弱い。実際、家族背景としての親属性要因の効果を析出した研究こそ数多あれど、家族構造や親子・キョウダイ関係等まで含めた家族環境の社会移動に対する影響を精査した研究となるときわめて少ないのが現状である。
そうした問題意識のもとで、本報告では、戦後日本の世代間社会移動に対する家族環境の影響とその趨勢を明らかにする。まず、研究伝統の基礎をなす移動表の分析技法の解説と、それを用いた研究成果について概観する。それに引き続き、親と複数の子ども(あるいはキョウダイ)が対応付けられたダイアドデータをはじめ、複数の社会調査データを用いた計量分析により、家族環境と社会移動の関連を検討する。それらから得られる分析結果を通して、豊かさの実現、少子化の進行、出生率の階層差、教育費用の家計負担の増加などが重なり合う社会的文脈のもとで、社会移動において家族環境がいかなる意味をもっており、それがいかに変容してきたのか、考察を試みたい。