研究
社研セミナー
2010年参院選における政策的対立軸
境家史郎(社会科学研究所)
日時:2011年 4月12日 15時-17時
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)
報告要旨
近年、政治家調査、専門家調査、選挙公報分析などさまざまな手法を用いて、日本政治における政策的対立軸(および各政治家・政党の政策位置)を示そうとする実証的研究が盛んであり、一般有権者に対する成果の公開も進んでいる。しかしこれらの諸研究は必ずしも同質的な帰結を導いているわけではなく、メタ的な評価を必要としている。2010年参院選においても、大手新聞2社が研究者との共同で政治家アンケートを行い、同選挙における対立構造を示す記事を掲載しているが、両者の内容は実質的な点で異なっている。
そこで本研究では2010年朝日新聞社・東京大学共同政治家調査を再分析し、エリートレベルにおける政策的対立軸の理解をより深めることを目標とする。方法的には、できるだけ研究者の主観を排して対立軸を抽出するため、従来の分析と比較して可能な限り多様な質問項目を探索的因子分析に投入する。
結果としては、「安保・社会政策における保守―リベラル度」「55年型政治経済体制に対する賛否」「新自由主義的経済に対する賛否」「民主党目玉政策に対する賛否」と解釈しうる、4次元の統計的に有意味な軸が抽出される。この結果は、先行する諸分析の解釈を(否定ではなく)包含し、さらに他の対立軸の存在を示唆するものである。
これらの争点軸は、55年体制以来の旧来的政治対立構造に加えて、90年代以降の経済財政危機、グローバル化の進展、および政権交代の実現等により形成されてきたものと考えられる。本研究ではさらに、以上の4次元軸上における主要政党の政策位置や散らばりの程度を示し、昨今の政党間・政党内競争のあり方に関する含意を得る。