東京大学社会科学研究所

東京大学

MENU

研究

所員の研究

澤田康幸・岩崎敬子・芦田登代『災害への暴露、現在バイアス、心理的貧困の罠についての実証分析』
Sawada, Y., Iwasaki, K., & Ashida, T. “DISASTER EXPOSURE, PRESENT BIAS, AND PSYCHOLOGICAL POVERTY TRAP: An Empirical Investigation” , Mimeographed, University of Tokyo,2021

2021.3.30更新

概要

 本研究では、災害に被災すること、個人の現在バイアス(現在バイアスとは、目先のことを優先する傾向のこと)、貧困の罠の関係について、2011年に東日本大震災で被災した2自治体(宮城県岩沼市と福島県双葉町)の個人マイクロデータを用いて実証研究を行ったものである。

 分析結果から、被災の程度が高いと現在バイアスが増幅し、それがメンタルへルス悪化につながっていることが分かった。さらに自然災害と技術的災害の「複合災害」に暴露された双葉町では、メンタルヘルスと現在バイアスとの間の逆の因果関係も観察され、複合災害が「心理的貧困の罠(psychological poverty trap)」を生み出すことが示された。

 本研究は、自然災害、技術災害、パンデミックなどに個人が暴露された後において、現在バイアスが生み出す行動ヘの悪影響やメンタルヘルスの悪化を抑止するための、行動変容へのコミットメントの提供や心理療法的支援提供の重要性を支持するものである。

TOP