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自己点検・自己評価報告 各所員の研究活動
樋渡展洋
1.経歴
1955年 | 9月15日生まれ |
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1978年3月 | 東京大学教養学部教養学科卒業 |
1980年3月 | 東京大学法学部卒業 |
1982年3月 | 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) |
1984年5月 | カリフォルニア大学 バークレー校政治学部修士課程修了(M.A.) |
1989年12月 | 同 博士課程修了(Ph.D.) |
1990年2月 | 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士) |
1989年4月 | 立教大学法学部助手 |
1990年4月 | 東京都立大学法学部助教授 |
1993年4月 | 東京大学社会科学研究所助教授 |
1994年12月~96年5月 | ハーバード大学国際問題研究所客員研究員(国際交流基金安倍フェローシップ)およびケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ海外フェロー(セント・ジョンズ・カレッジ) |
1996年8月~97年6月 | カリフォルニア大学 バークレー 校政治学部客員教授 |
1998年4月 | 東京大学社会科学研究所教授 |
1998年8月~99年5月 | コロンビア大学政治学部客員教授 |
2. 専門分野
比較現代政治部門 政治変動分野,専門分野:現代日本政治・比較政治経済・国際政治 経済
3. 過去10年間の研究テーマ
- 日本の戦後政党システム変容の比較政治経済分析
- アジア太平洋地域での現代日本の国際政治経済分析
4. 1998年度までの主要業績
- 『戦後日本の市場と政治』、東京大学出版会、1991年
- 「戦後日本の社会・経済政策レジームと与野党競合」『戦後日本の社会・経済政策(年報近代日本研究15)』、 山川出版、 1993年
- 「55年体制の『終焉』と戦後国家」『レヴァイアサン』16号、 木鐸社、1995年5月
- 「現代日本の比較政治経済分析の方法論的検討」『レヴァイアサン』17号、木鐸社、1995年
- 「『55年』政党制変容の政官関係」、 日本政治学会編『現代日本政官関係の形成過程(年報政治学1995)』、 岩波書店、1995年
- "Explaining the End of the Postwar Party System." in Junji Banno (ed.), The Political Economy of Japanese Society, Vol. 2. (Oxford University Press, 1998)
- "Adjustment to Stagflation and Neoliberal Reform in Japan, the UK, and the US," Comparative Political Studies, 31-5 (1998)
- 「政治改革運動と戦後政党制の変容--イタリアと日本の比較--」『社会科学研究』、 50-2 頁、1999
- "Economic Adjustment Policies in the US and Japan," Occasional Papers, 96-02 (US-Japan Program, Harvard University, 1996)
- "Japanese Corporate Governance Reexamined," in Margaret Blair & Mark Roe (eds.), Employees and Corporate Governance (Washington D.C.:Brookings Institution, In Print)
5. 社会科学研究所における自己の研究分野と研究活動の位置づけ
(研究所での私の研究分野は比較現代政治部門の現代日本政治である。研究者としての私のほぼ一貫した関心は、市場経済にあって、制度としての市場での諸活動がどのように政治の可能性を開放または制約し、その結果としてどのような政治変動がもたらされるか、特に政治の制度的変動の機制の解明である。以下、社会科学研究所での私の研究の進展に沿って、研究分野の解説と研究活動の位置付けを整理する。
(1)まず、私の研究領域であるが、それはアメリカ政治学でいう政治経済論 (political economy)であり、しかも、これまでの研究手法とはいわゆる歴史制度学派(historical institutionalism)と通称されるものであった。ただ歴史制度学派は特に精緻で固有な分析手法を持っているわけでなく、共通の分析視角として各国の制度的差異の淵源を特定の歴史的転換点での政治力学の展開にもとめるところに特徴があろう。この意味で歴史制度学派は本源的に比較指向であり、現行制度の歴史的・空間的特殊性を一般枠組で分析するものある。これまでの私の研究は、より具体的には、現代日本を事例にその政治変動の機制を先進諸国との比較を通して解明することであった。
(2)現在の私の研究は二重の意味で転換点にあると認識している。まず第一に、学位取得以来これまでの研究の力点は日本政治の比較分析にあったが、ここ数年は関心が日本政治の事例が比較政治の理論にどのような貢献できるか、その可能性を探ることに移ってきた。その意味で、「脱日本研究・入比較政治」を遅ればせながら試みているわけであるが、残念ながら十分に成功しているとは言い難い。具体的には研究業績のうち、1998年頃までに公刊されたものは日本政治の比較分析に力点があったが、これに対して、日本を含めた比較を広く世界の政治学者に訴える作業は、近年のワーキングペーパーやレフェリー学術雑誌への投稿が中心で、その公刊は1998年度末現在一点のみ、修正再投稿要請が数点にとどまっている。このような雑誌掲載は初稿提出後、数年を要するのが普通であるが、それを勘案してもまだ成果に乏しいと言えよう。また、この仕事は、実は、既に昨年段階で本の草稿としてほぼ完成している日本の五五年政党制の変容の分析の一部であるが、分析枠組が主要学術雑誌での採用という形で認められるまでは、本の完成・公刊を躊躇している。研究者としての力不足を痛感せざるを得ないが、なお暫くはこの努力を続けるつもりである。
(3)私の研究の第二の転換点としては、1994年以来準備をしていた日本の国内政治経済と国際政治経済の連係問題への研究関心の移動がある。そもそも、この分野は広く経済国際化の文脈で国際政治経済環境の国内政治への影響と対外経済政策の国際政治経済への影響の問題として学界でも急速に発展している領域ではあるが、従来は別々に発展してきた比較政治と国際政治の境界領域に当たり、比較政治の訓練を受けた私としては改めて国際政治、国際政治経済の修得が必要であった。このテーマーに関しても、やっとアジア太平洋の政治経済変動と日本の国内政治経済変動を関連させる具体的な仕事を開始したため、今後は国際共同研究や雑誌投稿を通してその成果を披露したいと考える。その場合も、できるだけ日本の解説ではなく日本を含めたアジア太平洋地域の分析がどのような理論的貢献の可能性があるか探ってみたい。
(4)最後に、私の研究活動と社会科学研究所の関係について簡単に述べる。もともと私の研究は市場での企業や労組(労使関係)の行動が政治にどのような影響を与えるかを分析するものであり、特に80年代の先進諸国の基本的政策課題であった財税制改革と社会福祉政策の再編が日本の政党政治にどのような影響を与えたかの分析であっため、本研究所のスタッフ(外国人研究員を含め)の影響は直接・間接を問わずはかり知れない程大きい。その意味では私は現在の社会科学研究所の研究体制の最大の受益者の一人であると言えよう。私の方もそれ相応の公共財を研究所に提供しなければならないはずであるが、残念ながら現在のところ私の貢献は研究所主催の会議での発表等に限定されている。今後本研究所も広く国際化の意味と影響を研究するなか、アジア太平洋の国際化と日本の関係の分析を通して、社研の共同研究体制の整備・強化に貢献できるものと思われる。
6. 今後の研究テーマ
- 経済国際化と「大国」の対応
Large Economies in Global Markets
これまでの経済国際化の国内的影響の理論的進展の焦点はヨーロッパ経済統合の際の貿易依存度が高く独自の労資協調による独自の社会民主的政策を追求してきたいわゆる小国(small states)の変容を大国との対照でとらえることにあったが、日本を含めたG7に代表される貿易依存度が低く国内体制も多様な諸国にあって、それ固有の国際化への対応があるのか、特に国際化がどの程度国内の社会政策を制約しているのかの検討を始めている。 - 証券市場自由化の先進国比較
Comparative Analysis of Securities Market Liberalization
1975年のニューヨーク、1986年のロンドン、その後のパリ、フランクフルト、そして東京と続く証券市場改革の時期的差異と政府の役割の相違を検討することで、「国際化」による自由化伝播の機制とその結果の相違を比較解明し、金融国際化による各国市場の収斂論の再検討をおこなっている。 - アジア大平洋経済秩序と「円国際化」
Asian-Pacific Economic Regionalization and the Internationalization of the Yen
経済危機後の日本の主要対外経済政策である「円国際化」をめぐる国際政治の検討を通して、アジア太平洋の貿易・投資関係が政治を媒介に金融秩序形成にどのような影響を与える解明する作業を行っている。このことを通していわゆる経済統合論や最適通貨圏理論など経済学とは別の国際政治の観点を中心とした地域経済統合の分析枠組の構築を試みたい。
7. 主な教育活動
- 大学院
東京大学大学院法学政治学研究科で政治学特殊研究を担当(主として「先進諸国の比較政治経済」 と「現代日本の国際政治経済」)。 - 学部
東京大学教養学部教養学科で政治学理論を担当(1997年度以降)。
8. 所属学会
日本政治学会,American Political Science Association, International Studies Association