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◆◇◆2008年度研究計画◆◇◆

㈵.定例の活動予定:人材ビジネス研究会

原則として月に1回、人材ビジネス研究寄付研究部門の研究委員を集めた研究ミーティングをひらき、調査研究の内容や進捗状況、活動方針などについて、報告や議論、取り決めをおこなう。


㈼.継続中および実施予定の研究プロジェクト

1.日本の人材ビジネスの機能と構造に関する総合的研究(継続)

担当:堀田聰子(東京大学社会科学研究所特任准教授)、佐藤博樹(東京大学社会科学研究所教授)、今野浩一郎(学習院大学経済学部教授)、佐野嘉秀(東京大学社会科学研究所特任准教授・法政大学経営学部准教授)、阿部正浩(獨協大学経済学部経済学科准教授)、坂爪洋美(和光大学現代人間学部准教授)

概要:
人材ビジネスをその機能の側面から分類すると、大きく、(a)情報の提供、(b)マッチング、(c)労働サービスの提供、(d)教育訓練の4つに分けることができる。このうち、(a)情報の提供の機能については就職情報誌ビジネス、(b)マッチングについては職業紹介ビジネス、(c)労働サービスの提供については人材派遣・請負ビジネス、(d)教育については教育ビジネスが、それぞれ主として担うかたちで発展してきた。このような人材ビジネスの諸機能やそれらの相互関係、各機能に対応した人材ビジネスの現状や課題について、総合的に分析しとらえることを課題とする。
さらに今年度は、特に職業紹介業に焦点をあて、求人企業や求職者の確保、そのマッチングに大きな役割を果たす人材コンサルタントの育成について、掘り下げた分析を行う。

【2008年度の予定】人材ビジネス企業を対象としたアンケート調査を実施する。さらに職業紹介事業に関する先行調査の再分析、インタビューならびに必要に応じて追加アンケート調査を実施する。

2.派遣という働き方をつうじたキャリア形成(新規)

担当:松浦民恵(東京大学社会科学研究所特任研究員)、佐藤博樹(東京大学社会科学研究所教授)、木村琢磨(大阪経済大学経営学部専任講師)、島貫智行(山梨学院大学現代ビジネス学部専任講師)、佐野嘉秀(東京大学社会科学研究所特任准教授・法政大学経営学部准教授)、高橋康二(東京大学大学院・麗澤大学外国語学部非常勤講師)、中道麻子(早稲田大学大学院・早稲田大学産業経営研究所助手)、堀田聰子(東京大学社会科学研究所特任准教授)

概要:
派遣という働き方を通じたキャリア形成のあり方について検討する。具体的には、派遣という働き方を通じて、㈰労働条件、スキル、担当業務のレベル等が向上しているか、㈪労働条件、スキル、担当業務の間にどのような関係があるか、㈫労働条件、スキル、担当業務のレベルの向上をもたらす要因は何か、等を明らかにする。職種としては、営業職、事務職、設計技術者、コールセンターオペレーター、看護・介護職を検討の対象とする。

【2008年度の予定】対象職種の派遣労働者に対するインターネット調査を実施する。

3.製品設計業務における人材活用と派遣技術者のキャリア(継続)

担当:佐野嘉秀(東京大学社会科学研究所特任准教授・法政大学経営学部准教授)、高橋康二(東京大学大学院・麗澤大学外国語学部非常勤講師)、佐藤博樹(東京大学社会科学研究所教授)、山路崇正(東京大学大学院)、東秀忠(東京大学大学院)

概要:
相対的に高度な専門的知識や技能を必要とする外部人材の活用実態やキャリアの状況を把握するため、製品設計に従事する派遣技術者をとりあげ、その製品設計部門での活用や管理の実態、人材ビジネス企業による人事管理の状況、派遣技術者のキャリアの実態や意識をあきらかにする。

【2008年度の予定】2007年度に実施した第1回アンケート調査の集計・分析をおこなう。技術者派遣企業に対するインタビュー調査を実施する。第2回アンケート調査を企画する。

4.人材派遣業における営業職の人材育成(継続)

担当:木村琢磨(大阪経済大学経営学部専任講師)、鹿生治行(高齢・障害者雇用支援機構情報研究部研究開発課常勤嘱託)、山路崇正(東京大学大学院)

概要:
派遣企業において従業員の多くを占める営業職員に焦点を当て、派遣企業における人材の育成と定着化について考察する。本研究では、営業職員に関し、求められる役割と能力、技能形成に有効な経験と教育訓練、勤続意欲の変化とその要因を明らかにする。

【2008年度の予定】派遣企業および営業職員を対象としたインタビュー調査を実施する。営業職員へのアンケート調査も実施する。

5.営業の仕事と人材活用(新規)

担当:松浦民恵(東京大学社会科学研究所特任研究員)

概要:
環境変化に対応した営業方法や体制の見直しが必要となってくる一方で、営業人材の育成や定着は現時点においても必ずしもうまくいっておらず、今後の人材ビジネスの展開においても、営業人材は一層重要なターゲットとなると考えられる。
そこで、本研究では、商品や市場のタイプに応じた営業の仕事の流れを体系的に整理し、それぞれの仕事における人材(ローテーションとしての営業担当か営業専門職か、内部人材か外部人材等)の活用(人材配置や役割分業)の現状を明らかにする。

【2008年度の予定】営業企画部門の管理職、営業現場の管理職を対象としたインタビュー調査を実施する。

6.登録型派遣における派遣先と派遣元による人事管理の連携(継続)

担当:島貫智行(山梨学院大学現代ビジネス学部専任講師)

概要:登録型派遣労働者の人事管理におけるユーザー企業(派遣先)と派遣会社(派遣元)の連携のありかたを検討する。より具体的には、派遣先と派遣元のあいだで、どのような人事管理の連携が行なわれているのか。また、そうした派遣先と派遣元の人事管理の連携には、どのようなパターンが見られるのか。人事管理の連携パターンの違いは、なぜ生じるのかなどをあきらかにする。

【2008年度の予定】人材派遣会社の営業担当者やコーディネーターおよび派遣先の職場管理者や人事担当者へのインタビュー調査を実施する。

7.コールセンターの人事管理(継続)

担当:仁田道夫(東京大学社会科学研究所教授)、前浦穂高(立教大学経済学部助教)、中道麻子(早稲田大学大学院・早稲田大学産業経営研究所助手)

概要:外部人材をふくめ多様な就業形態での人材活用がすすむコールセンターをとりあげ、そこでの労働や人事管理、労使関係の実態についてあきらかにする。それにより、多様な人材を活用する職場での労働や人事管理の労使関係の実態についての理解を深めるとともに、そうした職場における効果的な人事管理のあり方について検討をおこなう。

【2008年度の予定】:コールセンター従業員に対するインタビュー調査およびアンケート調査を実施する。

8.企業における人材確保の多様化と人材ビジネスの役割(継続)

担当:堀田聰子(東京大学社会科学研究所特任准教授)、佐藤博樹(東京大学社会科学研究所教授)、中道麻子(早稲田大学大学院・早稲田大学産業経営研究所助手)

概要:
定着と能力開発促進に向け、企業における人材確保策が多様化している。紹介予定派遣、トライアル雇用、デュアルシステム、インターンシップ、正社員登用、非労働力化した女性の再雇用といった方策の広がりの背景と位置づけを理論的に整理するとともに、特に紹介予定派遣を導入した企業をとりあげ、導入の意図や方針、活用実態と課題、派遣企業に求められる役割を明らかにする。

【2008年度の予定】紹介予定派遣を導入している企業を対象としたインタビュー調査を実施する。2007年度に実施したアンケート調査の分析を行う。


9.介護事業における多様な人材活用と人材ビジネス(継続)

担当:堀田聰子(東京大学社会科学研究所特任准教授)、佐藤博樹(東京大学社会科学研究所教授)、鈴木亘(学習院大学経済学部准教授)

概要:
人手不足感の高まりのなかで、介護職の定着と継続的な能力開発を可能にする法人の経営戦略と雇用管理のあり方が模索されている。そうしたなか、介護事業における派遣などを含めた多様な人材の活用が進んでいる。イ)良質なサービスを効率的に展開できる介護事業者の経営戦略と雇用管理のモデルを検討したうえで、ロ)特に介護事業者における人材戦略に着目し、派遣などを含めた多様な人材活用の実態とその背景、課題を整理するとともに、ハ)介護職の派遣をおこなう派遣企業の現状と今後の可能性を把握する。検討にあたっては、適宜海外におけるヘルスケア職種の派遣の実態を参照する。

【2008年度の予定】既存調査の個票データの再分析と収集事例の整理、国内外の派遣などを活用する介護事業者及びヘルスケア職の派遣をおこなう派遣企業、業界団体に対するインタビュー調査を実施する。

10.訪問介護職の能力開発とサービス提供責任者の役割に関する研究(継続)

担当:堀田聰子(東京大学社会科学研究所特任准教授)、佐藤博樹(東京大学社会科学研究所教授)、大木栄一(職業能力開発総合大学校准教授)

概要:
訪問介護サービスに対する質量ともに高まるニーズに柔軟に応えるためには、良質な介護職の確保・育成が重要との観点から、イ)訪問介護職に求められる職業能力を多面的にあきらかにするとともに、特に訪問介護サービスにおける現場管理者であるサービス提供責任者の役割に着目し、ロ)訪問介護職の定着・能力開発を促進するサービス提供責任者のあり方を分析する。

【2008年度の予定】訪問介護事業者との検討会を重ね、アンケート調査結果をもとに、サービス提供責任者の仕事の実践的なマニュアルをとりまとめる。全国各地の訪問介護事業所の雇用管理について、インタビュー調査を行う。

11.その他

新規のプロジェクトが追加されることもありうる。

 


㈽.研究成果の予定

1.刊行物


イ)『東京大学社会科学研究所人材ビジネス研究寄付研究部門研究シリーズ』。部門の研究成果は、研究シリーズとして刊行する。研究シリーズに掲載する論文は、部門として査読をおこなったうえで刊行する。
ロ)『東京大学社会科学研究所人材ビジネス研究寄付部門資料シリーズ』。資料的性格をもつと判断される部門の研究成果は、資料シリーズとして刊行する。
ハ)その他の刊行物。プロジェクト参加者は、研究シリーズないし資料シリーズを執筆後、そのデータを利用した研究成果を個別に各種学術雑誌などの媒体をつうじて公表可能とする。ただし、その際には、人材ビジネス研究寄付研究部門のプロジェクトの成果であることを明示することとする。

2.研究成果の発表会

11月に、研究成果の発表会を開催する。ひろく経営・労働関係の研究者や、人材ビジネス企業および人材ビジネスの活用企業等の関係者を招待する。研究委員が担当プロジェクトの研究成果を発表するとともに、出席者と議論をふかめる。

3.部門のホームページの改訂

部門のホームページについて、最新の活動内容や研究成果の概要を公表すべく順次、改訂していく。

4.その他

大量サンプルのアンケート調査を実施した場合、研究成果が刊行された後に、調査データを社研のSSJデータアーカイブに寄託する。


㈿.人材ビジネスに関する教育活動

1.東京大学経済学研究科での授業


東京大学大学院経済学研究科の人的資源管理論の講義(佐藤博樹・東京大学社会科学研究所教授)において、人材ビジネスと人材活用にかかわるテーマを取り上げる。

2. プロジェクトへの若手研究者の参加

部門の調査研究プロジェクトには、大学院生など、人材ビジネスにかかわる研究に関心をもつ若手の研究者を積極的に参加させ、先輩研究者のアドバイスや、調査遂行にかかわる経費の援助のもと、調査研究を実施させる。そうした活動を通じて、若手の研究者に、調査研究のOJTの機会をあたえ、調査研究にかかわるノウハウやスキルを習得させるとともに、研究者あるいは人材ビジネスの実務の方々との人脈をひろげさせる。それにより、人材ビジネスの研究を今後担っていく若手の研究者の育成をはかる。


㈸.海外の人材ビジネス研究者・機関との交流
 
 米英独をはじめとする諸国で人材ビジネス研究をおこなう研究者や調査機関等と、情報交換などの交流をふかめる。それにより、諸外国の人材ビジネスの現状に関する確かな情報を収集する。また、日本の人材ビジネスの現状について、海外の研究者等による理解を深める。さらに、人材ビジネスに関する国際的な研究のためのネットワークをつくる。

 



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