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◆◇◆2004年度研究計画◆◇◆

㈵.定例の活動予定
1. 人材ビジネス研究会
 毎月1回、人材ビジネス部門の各プロジェクトの担当者を集めた研究ミーティングをひらき、調査研究の内容や進捗状況、活動方針などについて、報告や議論、取り決めをおこなう。


㈼.実施予定の研究プロジェクト
1.生産現場における人材活用と人材ビジネスに関する研究


担当:佐藤博樹(東京大学社会科学研究所教授)、佐野嘉秀(東京大学社会科学研究所客員助教授)、藤本真(労働政策研究・研修機構研究員)、木村琢磨(東京大学大学院博士課程・日本学術振興会特別研究員)

概要:
イ) 生産現場における請負スタッフや派遣スタッフなど外部人材の活用実態の解明、外部人材を活用するユーザー企業の意図や方針の分析、ユーザー企業にとっての外部人材活用の効果の検証をこころみる。それをもとに、生産現場における外部人材の適切な管理や活用の仕方について検討する。生産現場で外部人材を活用する製造企業の事業所や部門を対象としたアンケート調査およびインタビュー調査の実施を予定。
ロ) 生産業務の請負事業や派遣事業を営む人材ビジネス企業の事業戦略と人事管理の実態について調査研究をおこなう。人材ビジネス企業がとりうる多様な事業戦略を明らかにするとともに、それぞれの事業戦略に対応した適切な人事管理のあり方を検討する。生産業務の請負事業や派遣事業を営む人材ビジネス企業およびその営業所へのアンケート調査およびインタビュー調査の実施を予定。
ハ) 生産現場における請負企業の現場管理者・リーダーの役割や、請負企業の現場管理者・リーダーおよび一般の請負スタッフのキャリアについて実態をあきらかにする。それをもとに、生産現場におけるユーザー企業と請負企業とのあいだの適切な管理の分担関係や、請負スタッフの望ましいキャリア形成のあり方について検討をおこなう。生産現場で現場管理者・リーダーとして働く請負スタッフを対象としたアンケート調査の実施を予定。

2.職業紹介ビジネスに関する研究

担当:佐野哲(法政大学教授)

概要:
職業紹介に関する緩和措置対象の中心となったホワイトカラー職種を対象とする職業紹介(ホワイトカラー紹介)事業を取り上げ、サービス内容、事業の経緯、規制緩和の影響、営業実態、今後の事業戦略など、民間職業紹介部門の事業内容の実態や今後の展望を明らかにする。業界団体の会員企業の事業所を対象とするアンケート調査の実施を予定。労働政策研究・研修機構が過去に実施した同様のアンケート調査と調査項目の一部を共有させることで、民間職業紹介に関する時系列的分析可能なデータの蓄積と分析をこころみる。

3. 企業グループ内人材ビジネス企業の役割に関する研究

担当:高橋康二(東京大学大学院博士課程・日本学術振興会特別研究員)

概要:
企業グループ内にもうけられた人材ビジネス企業が、企業グループ内においてどのような役割を果たしているかを明らかにする。その際、とくに、a)企業グループ内の企業が、自社としておこなう人事機能と、企業グループ内の人材ビジネス企業に任せる人事機能の相違とその理由、b)企業グループ内人材ビジネス企業が、自社グループ内のユーザー企業に対して果たしうる、グループ外の人材ビジネス企業とは異なる役割、c)企業グループ内人材ビジネス企業が、企業グループ内の人材の効率的な利用や円滑な移動について果たす役割についての解明をこころみる。企業グループ内人材ビジネス企業へのインタビュー調査の実施を予定。

4. 派遣スタッフのモティベーション管理に関する研究
担当:島貫智行(一橋大学大学院博士課程)
概要:派遣スタッフの仕事意欲を維持向上させるうえで、派遣元の社員が果たす役割を明らかにする。派遣スタッフの仕事意欲を維持向上させるうえでは、派遣スタッフに対して指揮命令をおこなう派遣先の社員以上に、派遣元企業の営業マンなど、派遣元の社員が果たす役割が大きいと考えられる。研究では、そうした仮説の検証をおこなうとともに、派遣スタッフの仕事意欲を維持向上させるための、派遣スタッフに対する適切な管理のあり方を検討する。派遣先企業の営業マンや派遣スタッフへのインタビュー調査およびアンケート調査の実施を予定。

5. 製造業設計部門における外部人材の活用に関する研究

担当:大学院の授業として実施(詳しくは後掲)

概要:
本研究では、相対的に高度な専門的知識をもつ外部人材の活用実態を把握するため、製造業の設計部門を取り上げ、そこでの外部人材の活用実態をあきらかにする。製造業の製品設計の部門では、製造企業が直接雇用する人材だけでなく、派遣スタッフや請負スタッフなどの外部人材が製品の設計業務に従事しているケースが少なくない。本研究では、設計部門へのアンケート調査を実施し、そこでの外部人材の活用実態を明らかにする。その際、とくに、外部人材に任せる仕事の範囲やそれを決める判断基準、外部人材を利用することの効果の解明をめざす。電機産業と自動車産業の設計部門の部門責任者に対するアンケート調査の実施を予定。

6. 在宅介護ヘルパーの能力開発と雇用管理に関する研究

担当:堀田聰子(東京大学社会科学研究所助手(7月1日着任))、佐藤博樹(東京大学社会科学研究所教授)、大木栄一(職業能力開発総合大学校助教授)

概要:訪問介護サービス事業者が良質なサービスを提供し、安定的に成長していくためには、良質なヘルパーの確保・育成を実現する雇用管理が重要である。そこでイ)介護の仕事と職務遂行能力の対応関係及びヘルパーの能力開発を促す育成・処遇の仕組みを明らかにし、ロ)特に既存の研究の蓄積がない人間関係スキルを軸とした在宅介護ヘルパーの専門性の明確化を試みることにより、実践的な能力開発型雇用管理のガイドラインを開発する。在宅介護サービスを営む業者および在宅介護ヘルパーに対するインタビュー調査およびアンケート調査の実施を予定。

7.人材ビジネスと学校における職業教育の相互作用についての研究

担当:玄田有史(東京大学社会科学研究所助教授)

概要:
人材ビジネスは、基本的に既卒者を対象として、営まれている。一方で、近年、就学者に対して、適切なキャリア教育、職業教育の実施することが、今後の人材育成および就業環境の整備のために必要であるという認識も広がりつつある。ただし、学校におけるキャリア教育、職業教育について、その効果的な実施情報ならびにその効果に関する評価は、今後の重要な研究課題として残されている。その際、現在の人材ビジネス産業において蓄積された職業情報の伝達、適性配置、カウンセリングといったノウハウやスキルは、キャリア教育などにきわめて有益な効果をもたらす可能性がある。こうした仮説にもとづき、職教育現場へのインタビュー調査およびアンケート調査を予定。

8.地方自治体の民間部門へのアウトソーシングに関する研究

担当:前浦穂高(東京大学大学院博士課程)

概要:
本研究では、地方自治体の民間部門へのアウトソーシングの実態とそれを規定する要因、アウトソーシングの効果について分析する。その際、地方自治体を調査対象とする事例研究にもとづき、イ)自治体の財政状況、労使関係の要因、国との関係(定員の問題)、議会の性格と首長の関係など、アウトソーシングする業務の範囲を規定する要因や、アウトソーシングを実施する際の判断基準、ロ)民間部門へのアウトソーシングの効果や課題などを明らかにする。さらに、来年度以降、事例研究から得た分析結果の一般性を把握するためアンケート調査を実施し、あわせて地方自治体でのアウトソーシングの進展度合いを把握する。地方自治体の民間部門へのインタビュー調査およびアンケート調査を予定。

9.米英企業における非典型労働の雇用行動に関する研究

担当:石原真三子(城西大学専任講師)、原ひろみ(労働政策研究・研修機構研究員)

概要:本研究では、日米英企業のパート・アルバイトあるいは派遣・請負労働者など非正規労働者の雇用行動のあり方を明らかにし、そのような雇用行動をとる要因を検討する。その際、両国の制度の違いによって、企業の労働需要がどのような影響を受けているのかも分析する。米国についてはNational Organizations Survey、英国についてはWorkplace Employment Relations Surveyの個票データを再分析する。両調査のデータは、それぞれ米国と英国における非典型労働者の活用実態についての情報をふくむ貴重なデータである。なお、日本については、別のプロジェクトで実施した「企業活動基本調査」の再分析結果を利用する。

10.米国企業における女性活用の現状と新たな法的アプローチに関する研究

担当:水町勇一郎(東京大学社会科学研究所助教授)

概要:現在アメリカ企業で新たに展開されている内部紛争解決システムと新たな法的アプローチ(structural approach)との相互作用や、その結果女性の登用や定着率が向上するに至った先進的な事例等を調査・研究し、日本のポジティブアクションや新たな労働法的アプローチの構築に対して示唆をえる。インタビュー調査や関連の文書資料の収集と分析を予定。

11.多様な雇用形態の活用に関する日英比較研究

担当:佐野嘉秀(東京大学社会科学研究所客員助教授)

概要:本研究は、主として小売業を営む日英企業の事例研究により、非典型労働者が主として担う仕事の範囲が、経営や労働組合、職場の労働者集団といった個別企業の労使関係を構成する主体の行為をつうじて形成される過程や論理の解明を目的とする。非典型労働者の仕事の範囲をどのように設定するかは、企業における人件費の抑制や生産性の向上といった経営上の課題のほか、典型労働者および非典型労働者の雇用機会やキャリア形成の機会など労働者の利害とふかく関わる事柄と考えられる。主として経営や労働組合、職場のライン管理者へのインタビュー調査をおこなう。さらに、これらの事例の一般性を評価するためアンケート調査データの分析や文献資料の収集分析を予定。

12.その他
新規のプロジェクトが追加されることもありうる。


㈽.具体的な成果の予定

1. 刊行物
イ)上記の調査研究プロジェクトの成果をリサーチ・ペーパーおよびワーキング・ペーパーとして刊行する。リサーチ・ペーパーをワーキング・ペーパーより上位の媒体と位置づける。リサーチ・ペーパーについては、人材ビジネス研究部門として査読をおこなったうえで刊行する。リサーチ・ペーパーとして刊行するに至らないが、資料的価値の高いレポート・資料については より簡易なワーキング・ペーパーとして刊行する。年度内に、各プロジェクト1冊以上のリサーチ・ペーパーないしワーキング・ペーパーの刊行を予定。
ロ)短時間勤務、有期契約、請負スタッフ、派遣スタッフなどの多様な雇用形態の人材活用について、理論的な整理をおこなった研究の成果(『労働新聞』に23回で連載中)を佐藤博樹編・人材ビジネス研究部門編集協力『人材活用ポートフォリオ入門』(仮題)として2004年9月(日経文庫)に刊行予定。
ハ)プロジェクト参加者は、リサーチ・ペーパーないしワーキング・ペーパー執筆後、そのデータを利用した研究成果を個別に各種学術雑誌などの媒体をつうじて公表可能とする。ただし、その際には、人材ビジネス研究部門のプロジェクトの成果であることを明示する

2.研究成果の中間発表会
 2004年秋に人材ビジネス研究部門のプロジェクトの成果についての中間報告会を開催予定。

3.人材ビジネス研究部門のホームページの開設
 人材ビジネス研究部門のホームページを10月頃までを目処に開設し、活動内容や研究成果の概要を順次示していく。

4.その他
大量サンプルのアンケート調査を実施した場合、研究成果が刊行された後に、調査データを社研のSSJデータアーカイブに寄託する。


㈿.人材ビジネスに関する教育活動
1. 東京大学経済学研究科での授業

 東京大学大学院経済学研究科において、大学院生を対象とするゼミナール形式での授業をおこなう(佐藤博樹と佐野嘉秀が共同で担当)。授業では、前期には人材ビジネスが提供する多様な労働サービスを前提とした企業の人材活用、後期には人材ビジネスの事業戦略と人事管理をテーマに、既存研究の批判的検討をおこなうとともに、可能であれば調査研究(インタビュー調査、アンケート調査、既存データの再分析)をおこなう。

2. プロジェクトへの若手研究者の参加
 人材ビジネス研究部門の調査研究プロジェクトには、大学院生など、人材ビジネスにかかわる研究に関心をもつ若手の研究者を積極的に参加させ、先輩研究者のアドバイスや、調査遂行にかかわる経費の援助のもと、調査研究を実施させる。そうした活動を通じて、若手の研究者に、調査研究のOJTの機会をあたえ、調査研究にかかわるノウハウやスキルを習得させるとともに、研究者あるいは人材ビジネスの実務の方々との人脈をひろげさせる。それにより、人材ビジネスの研究を今後になっていく若手の研究者の育成をはかる。

 




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