統一超商(股)

1996年9月10日

 

台湾セブンイレブンとSouthland社,SevenElevenJapanとの関係,また販売や取引方法における台湾の特徴を教えて下さい。

 民国67年(1978年)4月,統一企業が自社の製品を売るためのチャネルとして統一超級商業(股)を設立した。製造業が小売に進出するので従来統一企業の製品を売っていた商業企業が不満を持つといけないので,従来の統一企業の卸売り業者,従業員からも出資してもらった。その後外国のノウハウを吸収して小スーパーをやろうとしたがうまくいかず,1年後の79年5月,Southland社との提携に乗り出した。台湾とアメリカの国交断絶などもあってSouthlandはなかなか渋かったが,79年末Southlandと契約し,3人を3カ月アメリカに派遣してノウハウを吸収し,1980年2月全国14店(うち台北に9店)をアメリカ式のSeven Eleven店としてオープンした。

 しかし当初1986年までは統一超級商場は赤字続きだった。資本金1.98億元に対してその3分の2もの赤字が累積した。しかし,統一企業の高董事長はそれでもがんばってやり通そうとした。統一超級の株主である卸売業者,従業員たちは赤字企業の株を持っていたくなくなったので,統一企業が統一企業株2:統一超級株1の割合で交換して買い取った。こうして1982年には統一超級は統一企業の100%子会社,1事業部となった。

 1982年からセブンイレブンの他国のノウハウを吸収して経営を改革しはじめた。まず駄目な店を閉鎖し,ターゲットを主婦から青少年,上班層(サラリーマン・OL)に移した。店の設置場所も社区(コミュニティ)内から大きな道路に面した場所に移した。1986年には100店舗に到達して,ようやくスケールメリットが出てきて儲かるようになった。

 親会社の統一企業と統一超商では出勤時間,賃金などが異なっていたので1987年再び統一超商を独立させた。最初統一企業の100%子会社だったが,1993年,株式上場のために株主の分散化が必要となり,36%を特定法人に売った。株主となったのは大和銀行グループ,Goldman&Sachs,シンガポール政府投資,中央投資公司など。96年10月に上場予定である。

 1987年以降は毎年儲けが出ており,資本金は当初の1億元から儲けを増資に回していった結果28.1億元の資本金となった。

 SevenElevenJapanとの間には特に出資関係はない。統一麺包は,統一企業のパンを売るチャネルとして作った。統一は山崎パンと提携して台湾で初めてパンを大量生産した。一般の町のパン屋はパン焼き職人がいなくなるとパンを作れなくなり,店を閉めざるを得ないという問題があったので,町のパン屋に安定的にパンを供給するシステムとして統一麺包チェーンを作っている。統一と各統一麺包の店との関係は単なる売買関係である。Southland社は不動産,石油などへの投資が失敗して結局株の70%をSevenElevenジャパンに売却した。統一超商とSouthlandの間の関係はSouthlandがライセンスを提供して,統一超商が毎月ロイヤルティを売上高に応じて支払うという関係である。出資等はない。

 日本のセブンイレブンは効率がとてもよい。野村総合研究所を通じてPOSシステムを日本から吸収した。POSは日本だけが持っている。POSは自動化設備がなければならない。最初単品管理をやっていたが,バーコードがない状況では8桁の番号を商品の販売ごとにいちいち入力しなければならず効率が悪い。Southlandから単品管理ではなく分類管理をやるべきだと指摘を受けた。

 

フランチャイズ,直営店などの構成を教えて下さい。

 現在の全国総店舗数1268店,うち加盟店(フランチャイズ)741店であるから,前者から後者を引いた数が直営店である。フランチャイズは1982年に初めてできた。台湾人は自分が社長になりたいという気持ちが強く,ロイヤルティを払うようなことは好きでない。そこで,統一超商は最初は直営店を展開し,コンビニとはどんなものかを台湾の人々に知ってもらった。1991年からフランチャイズを大量に展開し始めた。フランチャイズはFC1FC2に分類している。FC1は店主が店の資産のオーナーか,もしくは店主が店舗スペースを借りているもの。これに属するのが100社余り。2000年には全体の20%にしたい。FC2は統一超商が店舗の資産や商品を保有していて,店主は統一超商内部の従業員か,もしくは外部の人にやってもらうケース。この場合,店主は経営者として店で働く人を自分で雇い,賃金も自分で決められる。直営店の場合は,店舗の資産・商品は当然統一超商のもので,店主も従業員,さらに店で働く人も統一超商の従業員である。FC1の場合は,粗利益の60%を店主が分け前であるのに対してFC2の場合は粗利益の40%が店主の分け前。FC1の場合は,店主がまた別の店を出すことも可能であるのに対してFC2はそうではない。

 FC1,FC2,直営店のいずれにおいても店の外観・デザイン,商品の種類と配置などはみな本社が決めている。FCの場合は加盟店主に対してしっかりした事前審査を行う。まず必ず夫婦揃って面接する。夫婦がともにやる気がないといけない。未婚の人で,結婚後相方がコンビニのつらさを知って夫婦関係が壊れることもあるので,必ず夫婦と決めている。また資産を持っているが誰かを雇ってやらせようというタイプの人もご遠慮願っている。コンビニはそんなに儲かるものではなく,資産運用の手段とはならない。

 

 統一超商の従業員数は3086人,直営店のパートなどを入れると5680人。加盟店の人は入っていない。

 販売のターゲットは19~35歳で,男性が女性より多い。

 直営店,加盟店いずれの場合も毎日売上げから一定の手持ち資金(たばこ,酒,切手の仕入れ費,水・電気料金を支払う資金)を差し引いた残りを本社に送金することになっている。(これは日本と同じ)毎日15時に精算する。次の月の15日に商品仕入れコストやロイヤルティを差し引いた残りを本社から店主に送金する。

 

メーカーと統一超商のどっちが主導的立場にあるのか:

 最初は14件しか店がなかったので,メーカーに店に置くものを納入してもらうのに苦労した。店舗数を増やさなければバーゲニングパワーがでないよとアメリカ側からいわれた。

 最近は逆にメーカーから「上架費」(商品をセブンイレブンチェーンで売ってもらうための費用)を取っていると避難されているが,ここには誤解がある。もしメーカーが新製品を売り出すために小売商店に1軒1軒頼んで回ったら大変だ。セブンイレブンの場合,メーカーはセブンイレブン本社1カ所だけに売り込むだけでよいからメーカーとしては大幅なコスト低減になる。だが,その分セブンイレブンが全国の店舗に対して商品をどこに置くべきかなどについての指示書を作り替え,コンピュータのプログラムを書き換えるなどのコストを負担することになる。そこで,このコストを新品推広費としてメーカーからもらうのだ。

 

商品開発について:

 小売とメーカーの協力による製販同盟を進めている。これまでにホットドッグ,ちまき,肉まん・あんまん,哈焼客(ハサク=アップルパイなど暖かいスナック),茶葉たまごなどを製造業者と連合してセブンイレブンの商品として開発した。茶葉たまごについてはSouthlandのアメリカ人は反対し,コーヒーを置けと指導してきた。だが,台湾人はコーヒーをさほど飲まないので,7-8年コーヒーを置いたが余り成果がなかった。茶葉たまごは成功した。ホットドッグは,台湾人は外側のパンよりも中身を重視するので,中身重視の商品開発を行った。統一企業外の企業と共同開発した。統一超商側がソーセージの大きさや価格などを指定し,食品業者側は製造技術に専念してもらう。

 

企業間関係

 最初に供給商を選ぶときにいくつかの業者を比べて協力相手を選択する。そうして決めた相手とは長期的取引を行いたいと思っている。メーカー,Franchiser, Franchiseeは共存共栄で誰が主人とは思っていない。 

 POSシステムは最初は統一超商内部でやっていたが,情報処理量が大きくなってきたので今は外部の情報処理会社にやってもらっている。そのシステムのための投資の情報処理会社がやる。

 台湾の場合,もともと日本のように何層もの卸売り業者があったわけではない。最初商品はディーラーを通じて買っていたが,今はなるべくメーカーからダイレクトに仕入れるようにしている。卸売業者から入れるケースはほとんどゼロといっていい。

 統一超商ではDC(Distribution Center?)に各製品の需要量を数日遅れで集約し,メーカーはDCで需要量を把握して納入する。日本のように全部POS化されてメーカーに需要が直接入るには至っていない。POSがまだ500店にしか設置されていないからだ。そうなったのは最初EOS,次にPOSを入れたから。最初バーコードがない状況ではEOSを導入するしかなった。

 

 統一超商の差別化戦略:茶葉たまご,手巻きすし,おにぎり(三角飯団)などを置く。新鮮さで差を付ける。

 政府の規制:営業許可証がないと開店できない。工業区には許可証が出ない。まず許可証を出してもらえる場所でなければいけない。これがないとタバコ・酒も売れない。

 

物流:

 野村総研と共同研究プロジェクトにより,DCを北部に1こ,南部に1こ作った。これは統一超商の物流課が運営している。このように最初は大きなDCをつくったが,あとからこれでは配送効率が悪いということがわかってきて,DCのダウンサイジングを行い,200店舗に1つ作ることにした。DCは外部の会社に委託してモデルを作ってもらっている。また,配送は統一超商,三菱(商事?)などと共同出資により配送会社を作って,この会社には配送に専念してもらい,日本からシステムを導入してもらった。また,倉庫,冷凍貯蔵なども出資関係のない他の会社が担当している。

 

これから客層を拡大していきたい。35歳以上になっても引き続き来てもらえるようにしたい。今小中生はカマデヤム(パパママストア?)よりもコンビニに行く。時代はコンビニの方向に向かっていくだろう。