台湾富士通(股)

1996年9月11日

 

 1973年に大同との合弁企業としてスタートした。昨年分かれて富士通の100%子会社となった。従業員265人。

 仕事は主としてコンピュータシステムの販売,外部機器の販売,受託処理,富士通の通信部門,富士通パソコンのマザーボードの開発(地元企業と共同で),購買部門(FMVの部品を調達)

 去年(1~12月)の売上げは123億元で,うち114億元は調達部門,コンピュータが9億元。

 購買は主としてマザーボード(全体の4~5割),モニター,オプションカード,ケース,その他の部品。マザーボードは設計は富士通が主として行い,台湾メーカーが生産する。設計は本社と台湾富士通の両方で行う。マザーボードの評価が重要だが,評価は日本でやっている。どの辺まで設計の上で台湾側に支持するかはケースバイケース。

 購買部門は50社ほどと取引。マザーボードは2社と取引。どちらも設計力をもったメーカーだ。

 富士通はもともと専用機からIBM互換機に転換した。互換機にしたことで,部品におけるスケールメリットを享受でき,コストが大きく下がった。台湾の企業は企業内での情報伝達が早いので,パソコン市場に適合している。パソコンは半年サイクルで新製品を出しているが,それに適応できる。

 マザーボードに乗る部品はCPUがインテル,メモリは日本,韓国,チップセットは設計がアメリカで製造は台湾,プリント基盤は台湾。台湾のDRAMも立ち上がりかけている。

 台湾メーカーはマザーボードを製造することによっては余り付加価値をとれていない。もっとも儲けているのはインテルだ。

 台湾で作るメリットは,一つは台湾富士通がある近辺にはインテルやVLSIの事務所が集中していて,集積の利益があること。新竹にもいろいろ集中している。集中しているとますます新しい企業がやってくるということだ。今世界のマザーボードの65%が台湾で作られている。半導体はボーダーレスだが,マザーボードはなぜ台湾かというと,台湾に集中しているからというのが一つと米系中国人とアメリカ,台湾のつながりというのもある。

 日本企業は中長期的なつきあいができるというところがよいところで,台湾企業もその面に着目している。欧米メーカーはビジネスライクで,取引相手がだめだとなるとすぐに相手をかえてしまうが,日本メーカーは長期的につきあっていくなかで相手の改良を促そうと言う傾向がある。マザーボードは台湾メーカーに月1回発注する。モデルごとに需要をみながらオーダーする。半年ごとに機種をかえるがマザーボードメーカーは変えない。未来永劫変えないと言うわけではない。

 マザーボードを納入している2社とはこっちに来る前からつきあいがあった。たまたまそことつきあっていたから調達先として選んだという経緯ではないか。台湾メーカーとの取引は日本のメーカーとのつきあいに似ていて,取引を継続しながら相手の改善を促していくということである。実際,品質,納期の善し悪しというのはある程度取り引きしてみない限りわからない。

 品質については台湾のスタンダードはアメリカのスタンダードに基づいている。日本のメーカーの要求,すなわち日本の消費者の要求水準はそれよりも高いので,台湾メーカーは日本企業との取引を通じて品質を改善できると考えている。マザーボードメーカー,半導体メーカーなどの供給品の品質が悪いときは相手の工場に行って監督する。台湾企業は日本に学ぼうとする意欲が強いのでやりやすい。

 パソコンの開発段階からマザーボードメーカーも参画する。

 アメリカメーカー的なやり方は自分の利益を純粋に追求できる点でメリットはある。

 

 マザーボードを供給している2社は全量富士通に収めているわけではなく,半分以下だろう。そうした独立的な企業間の関係の方が健康的ではないか。マザーボードの価格決定方式には確たる公式がない。パソコンは製品価格が市場によって決まってしまう。コストを積み上げるという価格形成ができない。製品価格を前提に,それを富士通と部品メーカーでどうわけるかその都度交渉すると言うことになる。

 なぜ日本で組み立てるのか。今,市場に近いところで組み立てるというのが潮流になっている。一つにはパソコンの組立は簡単である。また各部分の生命が短く不均一であり,ケースの生命がいちばん長いぐらいだ。だからフレキシビリティのある方がよい。また,市場変動への対応ができる。また世界の各拠点間での輸送には部品の方が有利。つまり,在庫コストを圧縮できる。在庫を抱えて困っている企業は多い。

 

今後の台湾パソコン産業:

 今,消費者と台湾メーカーがともにODMの方向に向かっている。台湾メーカーはODMであるか否かを問わず市場の方に手を伸ばそうとしている。ODMでなく,なおかつ市場のあるところに進出するやり方として,台湾メーカーが市場に工場を設けて,そこからパソコンベンダーにパソコンを提供し,修理もその工場で行うということが考えられる。

 また台湾の製造業が人手不足で海外進出が進んでいる。

 また,大きい企業がさらに有力になるだろう。台湾企業がコンポーネント製造から本体製造に向かっている。特にノートパソコンへのシフトが始まっている。デスクトップの場合は誰でも組み立てられたが,ノートの場合は小さな容量に収めなければならないので設計力が要求される。モニターの選択も重要。マザーボードも小さくしなければならず,その分付加価値も大きい。各社の違いがよりはっきり現れやすい。自社ブランド化も進み,以上のことは競争の激化,大企業の拡大を招くだろう。

 

 富士通のノートPCにおいては日本の部品の比率が高い。日本メーカーが海外で生産しているものを含めると日本で調達できない部品はない。台湾でも液晶を作る動きはあるがまだこれからだ。

 これからは企業間連合によって世界をカバーする時代だ。

 台湾のDRAMも立ち上がり始めた。TI-Acer,TSMC,UMCなどは有力で,将来DRAMでも有力になる力がある。富士通が64MDRAMで台湾企業と連合するという報道もある。

 チップセットはCPUメーカーに近い者が有利。だからインテルが独占的である。インテルがマザーボードの生産に進出した結果,台湾のシェアは90%以上から65%に下がった。台湾のシェアをインテルがかなり食った形だ。インテルのマザーボードを買うかどうかはケースバイケースで考える。

 デスクトップが今のサイズになったのは歴史的経緯としか説明のしようがない。ハードディスクはメーカーがアメリカの数社しかなく,日本で調達している。CDROMは日本が強い。フレキシビリティの維持と製品開発をどう両立させるかが問題。

 ソフトは台湾では発展せず,今後はインドと中国だろう。