隴豪科技(股)
1996年9月12日
基本概況
本社は小企業で,人員は昼夜班あわせて46人。生産内容は(1)SMT(自動挿入)と(2)DIP(自動ハンダ付け)された基盤の組立,検査。自動挿入の方は1日に15万個挿入する能力がある。ただし3交代で24時間稼働した場合。DIPの組立は製品によって異なるが1日に1000から2000個の組立能力がある。
営業額は月400万元ぐらい。
労働者はだいたい高校以上の学歴。直接労働力10に対して間接労働1の比率。
主にコンピュータ周辺機器のOEMを行っている。特に大衆電脳,藍天電脳のDocking Station(門)の組立を行っている。Docking stationとはノートパソコンを家庭においてマウス,モニター,プリンタなど様々な周辺機器と接続するための機械らしい。
創業史
1991年に設立された。最初はAIソケットを主体に生産していた。当初は大衆のOEMを中心にしていた。創業時は従業員6人で,機械4台,宝宏路にあった。(副総経理の名刺には宝中路の隴豪科技と宝宏路の文顕電子が記されているが,後者は自動挿入を行う工場らしい。)
1992~93年に自動挿入設備を導入した。組立(コンベアベルト),検査機器は1996年2月に導入した。
副総経理と総経理はもとは栄電(股)にいた。栄電(RPTI)は従業員3000人以上の大企業で,水力発電,発電,電気通信,情報(大型コンピュータ)の販売,サービスを行う会社である。栄電は退役軍人補導会の下にある半政府系の会社。両氏は栄電の資訊工程部にいた。当時副総経理が廠長,総経理が副廠長をしていた。その会社ではネットワーク関連のモデム,486のマザーボードなどを生産していた。両氏は空軍電子学校を卒業して空軍に勤務した後,退役して7年ぐらい栄電にいた。栄電では工場を立ち上げて,そののちこの会社を設立した。
創業の時,アメリカから設備を直接輸入した。その資金は設備を銀行に持っていってそれを抵当にして借りた。その利子を今も払い続けている。
栄電は政府系で保守的なので,発注がいっぱいきてもそれをさばくために生産能力を拡大しようと言う決断がされにくい。そこでチャンスがあると考えて独立した。この独立は栄電にとってもプラスになるので,栄電側も受け入れた。栄電の工場にはネットワーク関連のよい技術があり,博士6人,半分以上が大卒と人材も豊富だ。
大衆や藍天電脳は栄電にOEMを発注し,栄電だけではさばききれないので,当社にも仕事が回ってくる。両氏が栄電にいたときは最初はエイサーの下請けをやっていた。栄電がエイサーから半導体を買ったことから両者のつきあいが始まった。
OEM生産
当社でやっているのは純粋のOEMで自社で開発はしない。OEMは発注側からSOP(作業指導書),BOM(物料指導書)が降ろされてきて,それに従って作業を行う。部品もみな発注元から供給されてくる。加工に対しては加工賃が与えられる。加工賃は,当社が最初にSOPとBOMに基づいて積算して先方に示し,両者で交渉して決定する。 加工賃は部品の大きさと個数を考慮して決める。部品1個挿入ごとにいくらと決めている。OEMの供給元はここだけでなく4-5社に同じような加工(部品挿入)を委託している。入札などは行われておらず,発注側が受注側に対して他の受注企業がこんな価格を出しているのだからもっと下げろというような要求はしない。発注側はそれぞれの企業と個別に,相手の価格設定の不合理さがないかどうか,交渉する。加工賃は従って受注企業によって多少異なる。受注企業がある工程を手挿入で行うか機械挿入で行うかなどによっても加工賃に変化が出る。ではなぜ加工賃が最低のところに全部発注が集中しないのかというと,それは加工量が多くて一社ではさばききれないからだ。
大衆から受注しているOEMが最も多くて,当社の売上げの20%ぐらいである。当社の取引企業数は5-6社。1社に集中するとリスクが大きくてよくない。各社のOEM発注の内容は似たようなものだが,発注元によってグレード,品質に対する要求が違う。
当社からさらに下請けに出すのはSMTの1工程,すなわちハンダ付け(DIP)と一部の手挿入を外に出している。下請けに出すコストは営業額の4分の1。下請け先は2ー3社に固定している。それぞれ従業員20~30人の会社。
OEMの発注元は最初は藍天だけだったが,次に聯友がふえ,その次に大衆が増えてきて5ー6社となった。発注元も固定的である。発注元は最も小さな会社でも700ー800人の従業員規模。
OEMの受注が多すぎて他の会社に再下請けに出すと言うことはない。OEM契約のなかに他のメーカーに回してはいけないという項目が書かれている場合が多く,当社が有していない工程のみ下請けに出すことを発注側は認めるのである。
OEMで受注した製品も当社で検査する。大衆電脳からの発注量の変動は大きい。
OEMの契約は年1回行う。この契約文書はかなり原則的なもので加工賃をいくらにするとかは書かれていない。「貴社を当社の主たる下請け企業とする」だとか「故意の損害を引き起こした場合には補償する」といったような原則的な内容が書かれているのみである。加工賃は契約書を交わすのではなく,面談の交渉で決める。
発注の頻度は不定期である日には発注伝票が10も来るときもある。伝票がきたら3日後から相手に加工したものを供給することになっている。同じ会社の発注量の2分の1まで供給が終わったら,その会社から次の伝票が来る。忙しいときに他の会社からさらに発注があったら断るしかない。2-3社からの受注を同時にさばいているときもあれば,1社だけの受注の時もある。
発注元からはQC担当者が当社に検査にやってくるが,その人は加工品の機能や外観などをチェックするだけなので,製品デザインなどに関する秘密が当社からライバルの会社に漏れることはない。またそうしたことが起きないように当社として配慮はしている。
発注が集中したときも加工賃を上げると言うことはない。加工賃は一定の公式に基づいて決めている。
粗利は売上高の1.5%。売上高には加工賃しか含まれない。粗利から,OEM発注者から受け取った部品を壊してしまったときの補償やオーバーヘッドコストなども引かれるので利益率は大変低い。
当社はISO9002の認証を目指して主体的に5Sを進めている。5Sについては生産力中心の指導を受けている。ISO9002をとらなくてもOEM受注はできる。我々はもともと厳しく工場を管理してきたから。
発注が多くなれば,臨時工を雇って2交代,3交代で操業する。正式労働者の数は変えない。受注した加工品に設計上の問題があることに気付いた場合には先方にいう。受注する最初の段階で必ずそうした問題がないかどうかチェックするべきだ。
工場見学
今藍天電脳からのOEMでDocking stationを作っている。販売価格はいくらかしらない。
計測設備は60数万元だしてかった。
工場は自動挿入の方はまれな停電により今日は操業していない。組立・検査工程の方は,組立の方に女性,検査の方に男性が配置されていて,ベルトがゆっくりしたスピードで回っていた。この日は,Schwinnのブランドの入ったランニング機(走行距離等を表示するものらしい)を組み立てていた。今はわりと暇なので,臨時にこのランニング機の仕事をやっているという。
労働者はローテーションして,組立,検査をそれぞれ体験させ,多能工化して需要の変動に柔軟に対応できるようにした。
自動挿入機のメンテナンスは外部に頼んでいる。自動挿入機はパナサートのもの。値段は1台300ー400万元ぐらいする。手挿入は当社でも行っている。自動挿入機は4台で2本のラインにしている。