高鋒工業股份有限公司

1996年9月6日

 

会社の概況

 日本の工作機械産業と台湾とは10年の格差がある。

 我が社は1968年に成立した。従業員85人でうち兼教生(実習生)が10人。実習生は職業学校と我が社との提携により我が社に派遣されてくるもの。実習生の選抜は会社側が面接等をして決めている。平均年齢18歳ぐらい。会社が実習生を受け入れる理由は人材確保と人材育成のため。学生は卒業しなければならないと言う圧力があるので一生懸命働く。また会社から奨学金を与えることで,将来当社に就職する可能性も出てくる。実習している間に工作機械産業に興味を持つ可能性もある。外国人労働者は使っていない。

 昨年の営業額は5.5億元で前の年より20%伸びた。

 高鋒は昔は伝統的なMilling machineだけを作っていたが,20年ぐらい前からCNC機を製造している。伝統的な機械は今は関連企業で生産し,本社ではNC機のみを作っている。

 工作機械の生産台数は今年240台ぐらいの予定。

 去年は70%以上輸出した。今年は87%輸出,13%国内の計画である。国内市場は景気が悪い。これは大陸の不景気の影響である。輸出先は欧州30%,アメリカ30%で残りは台湾と東南アジア。中国大陸への輸出に対して(台湾政府の制限はないが)1996年4月より中国政府側で国内産業の保護のために関税を高くするなど工作機械輸入を制限し始めた。大陸への輸出に対してはNC Controller付きのものに対しては日本政府がかなり注文を付けてくる。

 1994年には国内向け50%,輸出50%だった。代理商を通じて輸出している。自分で拠点は作っていない。アメリカへの輸出は遠東を通して行っている。

 10年前に日本のJMIから台湾CMD(精密機械発展協会,現在はPMC)が機械検査の技術を導入した。測量,検査機械も導入された。それが各工作機械メーカーに普及されて経営者の観念を変え,それ以降OEMや輸出が増えた。上記協会の会長は遠東の会長である。

 ControllerFanuc, 三菱,Siemensを使ってるが,PC-Baseも増えてきた。PC-baseOEMも10数%程度行っている。

 高鋒に対して遠東機械工業が46%の出資を行っている。遠東の会長と高鋒の会長は兄弟である。民国81年(1992年),世界の工作機械が不景気の時に遠東からの出資が,遠東社と高鋒の会長との間での株の交換という形で行われた。経理等,経営に関しては両者は完全に独立である。高鋒のもとの会長も荘というが,遠東の荘会長とは関係はない。遠東と高鋒の製品には相互補完性があるので提携がなった。来年高鋒の株は店頭公開される。

 高鋒は高精度,加工速度の高速化を目指している。

 現在マシニング・センターが生産の80%を占め(1980年ぐらいから),CNC Milling machineが20%である。マシニング・センターについては日本のOYAと技術協力した。

 創業者は台中高工機械科の出,初めから工作機械を作っていた。資本金は親戚などから集めた。設立時は特にパートナーはいない。当時は工作機械は売り手市場で,作れば売れたから特に営業努力は必要でなかったので,経営面のパートナーは必要でなかった。販売促進は展覧会への出品の他,台湾のなかだと工業が台北,台中,台南などに集中しているので売りやすい。

 設計部門は機械設計6人,電工5人。

 

関連会社

 伝統的なMilling machineは2つの小さな会社でOEM生産している。それぞれ従業員20~30人,営業額1億元規模の企業で,高鋒のかつての廠長と総経理が作った会社である。前者は1981年設立。後者は1989年に設立。後者は昌xin(金三つ)という名である。総経理は高鋒設立初期からのパートナー。設立当初は高鋒から支援したが今は独立した。高鋒はそれぞれに19%ずつ出資している。

 昌xinのように別の会社を作ることで,販路,技術などの面でさらに広いルートを確保できる。高鋒と昌xinなどで分業することで,悪性競争(過当競争)に陥らないですむ。昌xinなどの設立時に,高鋒は在庫部品をそちらに移転し,アセンブリ科長を先方に派遣した(そのまま居着いた)。彼は自分から望んで行った。創立時に従業員も株を所有した。

 

下請け

 部品の金額の80%は外注・購入。ball screwは輸入が主で日本,イギリスから。controllerは日本。ベアリングは輸入品だが,台湾で買う。リニアウェイも台湾でドイツ・スター社のものを買う。伝動軸,鋳造部品もみな外部から購入し,ここではアセンブリだけを行っている。研磨,熱処理も外部で行う。10年前は外注・購入の部分は60%でその後上昇した。その理由は,内製するために設備を増設すると効率が悪い。台湾では中心・衛星システムを推進していることもある。部品メーカーに品質について指導する。品質管理のチェックリストを先方に渡して先方がチェックするようにしている。品質管理をちゃんとやってくれるのなら内製する必要はない。発注先は,特定の加工業務に特化しているので評判を落とさないように一生懸命やっている。2から3交代制で創業している。従業員2-3人の家庭式工場もあり,変化への対応が早い。部品メーカーは20社ぐらいから同じようなものを受注しているので,1社との間で問題が発生すると他の受注先からも文句が来るので,すぐに対応するようにしている。高鋒は100-200社の部品メーカー,30-40社の加工メーカーと取り引きしている。その規模は旋盤加工メーカーの3-4人から,鋳物工場のように60-70人に達するところもある。高鋒のQC部門や外包部門,副材購入部門が部品・加工メーカーを指導している。

 ライバルメーカーが同じ会社から部品を買ったり,加工を委託することがあっても関係ない。売れ行きのよいとき,同じ部品・加工メーカーに仕事が集中することもあるが,重要なところには普段から一定の仕事量を保証したり価格面で優遇したりして恩を売っておけば,そうしたときに相手もこちらを優先してくれる。部品・外注先はなるべく固定したいと思っている。

 下請け企業に対しては品質水準表を作って合格率80%を割り込んだ時は指導し,3ヶ月間改善がない場合は取引を停止する。実際に取引停止になるケースは多くない。ISO9000のやり方に基づき,下請け先として取引を始めるときにもまず相手を審査する。外注・加工先メーカーは増え続けており,取引停止となる企業は多くない。ISO9000の普及により技術が急に下がることはなくなった。下請けメーカーは中部,台中県市が中心である。

 

人的資源

 当社でかなり長期的に働いている人も何人かいる。仕事の必要に応じて新卒と経験者を雇う。営業や財務はある程度の経験が必要なので,経験者を雇う。製造の方は新卒でも構わない。外国人労働者を入れるとすれば,技術面でオープンにしても構わないところにだけいれる。いずれにしても長期的に居着く可能性は少ないからだ。

 課の下には組(4~5人程度)がある。組長は技術や仕事ぶりや管理者としての素質などをみて決める。勤続年数も関係ない。また新入社員は必ずヒラから始める。

 課長は人事評定委員会(経理以上で構成される)で決める。部長,課長については学歴および勤続年数を考慮する。

 

賃金

 年末奨励金は30日分ぐらい。会社全体と個人の仕事ぶりによって額が決まる。人によって4段階に評定する。各段階で7日分ぐらいの差がある。

 また毎月,生産奨励金を出す。10007000元ぐらい。昔は総経理が生産奨励金を多くもらって,下に行くほど少なくなっていたが,不満が強かったため今は生産額に応じてみんな平等に分配することにした。その結果,みんなが生産額に関心を持つようになり,生産性が上がり民国83年には生産額は300万元/人・年だったが,600万元/人・年の生産額になった。

 基本賃金職務手当+技術手当+皆勤手当+生産奨励金という賃金構造

  60%   40%

 職務手当は組長など役付きの人につく。技術手当は社内で評定した工程師,副工程師,助理工程師,一級技術員などにつく。なお技術者は30数人いる。学歴および経験によって評定する。各レベルによって学ぶべきことが決まっている。

 就業時間は土曜の午後の分を他の日の朝に持ってきている。業績がよければ就業人管を短縮する。

 基本賃金は,まず新人が入ってきたときに学歴,経験を考慮して決め,あとは政府の勤工教人員の上昇率に併せてベースアップする。組合はなく福利委員会があるだけ。

 従業員のトレーニングは外部と内部がある。外部は学習班,中衛技術中心の講習などに1~3日ぐらい参加させる。また内部は現場での組立,QC,電工設備の実習など。そうしたトレーニングを受けたことを昇進のさいに参考にする。