創意精密工業(股)
1996年9月14日
資料を参照せよ。
歌林(Colombia),美朔(Maxson),創意(Columbia Automation Machinery)の3社が親子関係にある。歌林は台北に事務所をもち工作機械の輸入・販売・サービスを行っている。美朔はここ(新荘市補大工商城の一角)の3階にあり金型の輸出を行っている。創意は1-2階でプラスチック金型の製造。
創意は一九八八年に設立され,従業員は今20人。現場労働者15人,2人が設計,他に総経理,経理,営業。主としてプラスチック成形金型を生産。主たる取引先は米Shure Brothers, 日本ダイキン,日本高分子,台湾三洋,大同など。
美朔は年8000万元の輸出実績を持っている。創意の作る金型の4割はMaxsonを通じて日米欧に輸出される。6割は台湾域内に販売。
美朔が輸出する金型の内,年1000万元が創意のもの。
歌林は1980年に設立された。金型専用の工作機械を輸入して金型メーカーとのつきあいが始まり,次に金型メーカーの製品を輸出することにより金型メーカーとの関係をより密にしようということで1985年に金型輸出を担う美朔が成立した。
最初は総経理がアメリカに台湾金型の売り込みに回って,苦労した。
製造に進出した理由は:最初CNC工作機械の輸入を行っていて,顧客に工作機械の効能や使い方を教育・宣伝するために実際に使ってみせる必要があった。そのうち,顧客が試作などの仕事を回してくるようになった。
分業構造
金型ができるまで。(資料を参照) 客が図面を提供する。アメリカは電送により,日本は客が来てFace to faceで提供。顧客から製品図をもらってそれを部品図に分解する作業は当方で行う。急いでいるときは設計も外注する。設計だけやる会社は多いし,増えている。金型の製造工程で試作(金型を使ってプラスチック部品を作ってみる)などいくつかの工程は下請けに出している(資料を参照。資料で点線で囲まれているところ)。下請け企業は設計会社も含めて半径10キロ範囲以内に分布している。一般にはもっと近い。NC加工屋はすぐ近くにあるし,研磨はとなりにあったが引っ越した。熱処理屋は建国路にある。熱処理は2社の専業メーカーに依頼しており,両者とも60ー70人の従業員を抱える大きな企業。熱処理は投資規模が大きいので企業が大きくなりがち。この2社は真空熱処理と磁化熱処理のどちらが得意かに応じて発注を振り分けている。ワイヤカットは7から8社,放電加工は10数社近辺にあり,そのなかから選んでいる。実際に発注するのは1~2社。下請けに出す頻度はまちまちで成形研磨などは年1回しか頼まないこともある。放電加工については当社にも設備がある。鏡面加工など特殊な加工を外注している。
下請け企業40数社と取引があるが,日常的につきあっているのは10数社。それぞれの下請け先における当社の仕事のシェアは5%ぐらいで,つまり各社は20社ぐらいから発注を受けているということだろう。
手仕上げについて:100分の5ミリ以上のずれがあったらもう一度CNCにかけるが,それ以下なら手仕上げする。
従業員と賃金:
以前から金型業界にいた人もたくさんいるし,職業訓練学校を出て入ってくる人もいる。金型設計の担当者は高工,工専を出て,金型工場での経験がある人が必要である。一般にはこれらの学校を出て,1年半ぐらい工場でOJTすると簡単な図面を書かされ,2年たったら指導者つきで独立する。設計人員は現場で仕事はしない。だが,現場で仕事の状況をみにいく。現場労働者からのフィードバックもある。本当は高校を出て現場で訓練したほうがよいようにも思う。設計人員が自分で機械を操作してみたりしたほうがよいが,その時間的余裕や余っている機械がない。
人間の流動:設計人員は定着している。現場労働者は1990年からずっと働いていて,経験者となって他の労働者を指導する人もいる。問題は人が出ていってしまうことよりも人が見つからないことである。当社からすでに6人がやめて独立した。特に組み立て,仕上げの人が独立した。そうした人に下請けに出すこともある。独立されることは特に脅威とは感じていない。
新人の訓練:経験者なら企業の基本的なことを教えてすぐに仕事に入る。職業学校を出てきたような人は1年は先輩について簡単な仕事をして学ぶ。2年目には金型の構造を学び,分解できるようにする。3年目にようやく1人だちする。当社の仕事の種類はCNCフライス盤,旋盤,放電加工,研磨,ラジアル・ボール盤などがあるが,CNCフライス盤はプログラミングが必要なので一人の人がずっと専門で担当しているが,他の4種類の機械については労働者はみんなできるようにしている。
賃金は主として経験年数に応じて出しており,CNC操作工について特に高くしてはいない。設備が先進的だからといって人間が先進的なわけではない。仕上げの人の月給が一番高い。賃金は経験によって決まる本給と超勤手当が基本。発注が多くなれば彫金が増え給料が増える。年末賞与を出す。会社の業績と個人の仕事ぶりによって出す額を決める。また中秋節,端午節にも紅包を出すがこれはわずかなもの。工作賞与をやろうと考えているが,まだやっていない。金型業界でやっているところはない。
賃金改定は年1~2回。年2回のことが多い。1年に5%ぐらいずつ上がっている。公務員の改定幅よりも高くしている。
賃金は金型業界のなかで一般的水準だ。金型業界の賃金水準は業界人なら誰でも知っているのでそれに影響される。金型業界の水準は高い。(渋い顔)今輸出が増えていて好調だからだ。
台湾の技術をもってすれば特に難しい金型はない。時間がかかるかどうかである。IBM関連会社のレーザープリンタケースの金型は18面で,45万ドルで売った。
金型メーカーの9割は10人以下の規模だ。美朔のような金型専門商社は10~20社ぐらい。10人以下の会社はみんな商社を通じて輸出している。金型業界全体では7割ほど国内に売っている。国内市場の状況はよくない。
輸出市場におけるライバルは欧州ではスペイン,ポルトガル,アジアでは日本とは価格差があって競合しないが,韓国は同じ品質レベルだと韓国のほうが高い。韓国の方が企業規模が大きい。シンガポールが一番のライバルだが生産規模が小さい。
ここはクラスターか?: 創意が立地しているのは補大工商城といって太平洋というデベロッパーが1988年ぐらいに開発した。工業団地に入る道路はみな門が閉まるようになっている。特に機械加工工場を集めたわけではないが,機械加工屋が多い。もっともその前からこの近辺は機械加工工場が数多く立地していた。ここは台北県の中心で,樹林,板橋などにも工場が多い。家庭式工場がこの近くに20~30年前から数多くできている。
金型に関しては台湾区金型工業公会という業界団体がある。また台北県プラスチック製品同業公会というものもある。
ここに立地するメリットとして,下請け工場を見つけるのが便利。人材を見つけるのが容易といったことはある。受注についてはとくにメリットはない。
創意が他社からの横請け(金型の受注)を受けることがまれにあるが,それほどやりたいとは思っていない。
また受注が多くて他社ないし従業員が独立して作った工場に横請けに回すことはない。ただ,設計を創意でやって加工から完成まで他社に下請けに出すことはある,
台湾三洋は5~6社にプラスチック金型を発注している。どれも似たような規模の会社。金型メーカーどうしで互いにどんな設備を持っているか,品質はどうかなどの情報は持っている。そうした情報は,一つには下請け受注をとりたい企業が自分から売り込んでくることで得ている。またトラックで金型を配送している人が他社の状況を教えてくれることもある。
総経理は清華大学卒。92年から創意で働いている。CNC工作機械の専門家であった。12年間金型業界にいる。
中国・合肥の美菱に冷蔵庫の金型を売っている。中国地場産のものはだいぶ劣り,加工物を見ただけで台湾製との違いがわかる。中国の金型は10万回加工すると駄目になる。創意のは60~70万回使える。
工場は隔週土曜休みのため閉まっていた。