研究活動

プロジェクトセミナー

平等な家事分担に対する妻のニーズ:その認知と表出

報告要旨

市場における女性の雇用労働が増加する一方で、家事労働はいまだ女性に大きく偏っている。共稼ぎ世帯では、女性の総労働時間(市場労働と家事労働)が男性のそれを上回る状態が各国でみられるが、女性の家事労働は一般の経済指標では捕捉されないため、不可視化される傾向にある(Elson, 1999)。ガバナンス論において「個人のニーズ」及びその充足の程度はもっとも重要な分析課題の一つであるが、従来の研究では、家計生産に関して家族や世帯を単位とする分析が主流であり、家族の中の個人―特に女性の―ニーズについて十分な関心が払われてこなかった。すなわち、世帯内における個人のニーズや家事労働の分配交渉に政策や雇用制度等の構造的な要因がいかにかかわっているかなどについてはブラック・ボックスとなってきた。しかし、家計生産/家事労働の分担に対し、女性自身がそのニーズをいかに認知・表出するかは、政策目標の設定・手段の選択にも大きく影響を及ぼす課題である。そこで本分析では、女性の家事分担に対する不公平感・パートナーとの対立を、社会におけるジェンダー不平等などの構造的制約と適応的選好(Sen, 1985)の概念と関連付けながら計量的に検討する。データはInternational Social Survey Programme (2002)で、分析には日本を含む34カ国を用いた。

          
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