研究活動

プロジェクトセミナー

サプライ・チェーンのガバナンス

報告要旨

 東日本大震災によって関東北部から東北にかけて数多くの工場が被災し、「サプライ・チェーンが寸断され」、日本国内の工場はもとより中国で稼働している日本の自動車メーカーの工場、GMのアメリカの工場、ノキアのヨーロッパの携帯電話工場などいろいろなところで影響が出た。この事件によって「サプライ・チェーン」がグローバルにつながっていることを初めて意識した人も多かったに違いない。さらに10月からのタイの洪水によって多くの日系企業の工場が水没し、日本企業のサプライ・チェーンは再度試練にさらされた。  これらの試練によって当事者もびっくりするぐらいサプライ・チェーンが意外な形でつながっていた。そして試練のなかで日本のサプライ・チェーンの強みと脆弱性が浮き彫りになった。  本報告では、まず日本企業によるサプライ・チェーンのガバナンスの静態的な特徴を、中国企業やアメリカ企業との比較を通じて明らかにする。中国企業やアメリカ企業の場合は、特定の取引先企業との密接な関係を前提としない、市場的な、あるいは「モジュラー」な関係が多いのに対し、日本企業の間では長期的で安定的な関係が特徴的である。本報告では中国市場を舞台とする日系企業、欧米系企業、中国系企業によるサプライ・チェーンのガバナンスの違いを立証する。  さらに危機に瀕したときに日本企業のサプライ・チェーンがどのように対処したかを、東日本大震災後の対応を中心に検討する。日本企業は普段から長期的安定的関係を維持してきているがゆえに、危機に際しても企業間の協力によって迅速な復旧が行われた。他方で、日本企業は自立的に危機に備える面で弱さを残していることも一連の試練のなかで明らかとなった。

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