研究活動

プロジェクトセミナー

大規模自然災害とサードセクターの役割:東日本大震災における生協の支援を中心に

報告要旨

東日本大震災における協同組合の役割を時間的・空間的広がりから見るために阪神・淡路大震災における生協の活動について振り返ることにしたい。コープこうべは120万人の組合員(組織率61%)をもつ世界最大の生協であったが,本部ビル,155店中17店舗全壊・重度損壊,共同購入センター5カ所損壊,物流センターの倒壊により,500億円の損害を被った。しかし,被災の当日から被災者の救援のために店舗・店頭での物資供給を始めたが,共同購入は2カ月弱中断し,御用聞きが再開された。また,神戸市との「緊急時の物資供給等に関する協定」の発動により,避難所・仮設住宅への生活物資配送を行った。さらに,組合員もくらしの助け合いの会による安否確認・緊急支援から新設のコープボランティアセンターによる継続的支援へと活動を拡大した。この他,全国の生協からのボランティア派遣はのべ1万人に達した。このような生協の活動は「被災地に生協あり」との新聞報道につながった。このような「創造的復興」への取り組みによってコープこうべの事業はいち早く再建したが,その後競争激化により供給高は低減しており,暮らしとコミュニティの復興も道半ばである。しかし,災害に備えたインフラの分散,地方自治体の協定,図上演習の実施は全国の生協に広がり,また世論動員によってNPO法や被災者生活再建支援法(1998年)などの制度改革に貢献したことは今日の震災対応につながっている。

東日本大震災に際して,みやぎ生協(組織率70%),いわて生協,コープふくしまは店舗,配送センターなど被災し,東北における生協宅配事業は1ヶ月間中断されたが,生協は当日から店頭,移動販売車,御用聞きによる物資供給を開始し,自治体との物資供給協定に基づく避難所等への物資供給を行った。全国の生協から、のべ3,587人(トラック1,190台)を派遣し,食品や燃料を含む約71万点の物資支援)を行ったが,日本生協連も食品・飲料水・毛布など1,170万点(10tトラック633台分)を調達・配送した。生協組合員も安否確認,被災者救援募金,ボランティア活動に取り組んでいるが,今回は東日本大震災支援全国ネットワークなど,サードセクター全体をカバーするネットワークが形成されたことは注目に値する。当面,被災者の生活支援,被災生協の再建支援,被災地生産品への需要創造による生産者支援,風評被害の防止が重要であるが,今後の政策課題としては被災地の中長期的な復興のためのくらしとコミュニティづくり,地域経済の再生,エネルギー政策の検討,全国の震災対策とBCPがあげられる。

※ディスカッション・ペーパー「大規模自然災害とサードセクターの役割:東日本大震災における生協の支援を中心に」は、研究成果のページからご覧になれます。

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