研究活動
プロジェクトセミナー
世界の中の日本の市民社会とガバナンス: 13カ国国際調査と自治会・社会団体・NPO・自治体日本全国調査の方法と射程
- 報告者: 辻中豊 (筑波大学大学院人文社会科学研究科教授)
- 日時:2010年10月19日 15時-17時
- 場所: センター会議室(赤門総合研究棟5F)
- 対象:学生・院生・教職員
報告要旨
日本は、先進国最小の公共部門を持つという条件下、一方で長期に亘り世界第二の経済規模を維持し、他方で世界最悪の累積赤字に悩むといった正負両面を呈する。また震災後などで活発で自発的な市民(近隣組織)活動が見られる反面、NGO・NPOの組織的基礎は国際的に見て弱い。このように日本の政治と市民社会の関係はパズルに満ちている。国際比較によって、実証的に日本の市民社会構造を正しく位置づけ、政府やガバナンスとの関係の解明が求められている。
JIGSプロジェクト(Japan Interest Group Study, Cross-national Survey on Civil Society Organizations and Interest Groups in Japan)では、大型科研(特推)を得て、日本の市民社会の構造を包括的かつ実証的に調査しつつ、米韓独中の2次におよぶ4カ国調査、その他ロシア、ブラジル、トルコなど8カ国調査、合わせて12カ国の現地調査結果と日本との比較を通じて、日本の政治と社会のアクター間相互作用メカニズム(ガバナンス)を明らかにしようとする。ここで構造とは市民社会組織全般を指し、日本調査(2006-07)では3レベル(近隣住民組織=自治会等、電話帳所収の社会団体、登録NPO)に注目し、市民社会論、ソーシャルキャピタル論、政策ネットワーク論、ガバナンス論を背景とした調査票を基に実証研究を行った。日本の市民社会の実態が、3レベル、約4万件の団体データ、1000余の市区町村データ(4部局4千余)によって明らかなりつつある。縮小した規模でドイツ、韓国、アメリカ、中国の市民社会組織の調査を実施し、取り纏め中である。日本に関しては、全調査コードブック並びに3種類の調査報告書計7冊を作成し、現代市民社会叢書(木鐸社)を企画し、2010年に3冊を刊行した。他の12カ国についても比較とモノグラフの研究書を準備している。
JIGSプロジェクトは、2009年以後の日本の政治変動を受け、「政治構造変動と圧力団体、政策ネットワーク、市民社会の変容に関する比較実証研究」(科研S)として継続中である。本報告では、初歩的な発見を提示しつつ、当プロジェクトの方法と射程を紹介したい。
※ディスカッション・ペーパー「世界の中の日本の市民社会とガバナンス」は研究成果のページからご覧になれます。