関満博『北東アジアの産業連携/中国北方と日韓の企業』(新評論、2003年1月刊、625ページ)

 精力的に中国各地のリポートを刊行している関満博教授の最新作である本書は、渤海を囲む8都市(天津、青島、済南、Wei[さんずい+]坊、煙台、瀋陽、大連、丹東)を取り上げ、各市の経済概要の説明と、各市の日系企業26社、韓国系企業30社、中国企業15社のケーススタディから構成されている。

 本書で強調されている点の一つは日本企業と韓国企業の中国進出のスタイルの違いである。日本企業の場合、現地法人の経営者として派遣される人はほとんど単身赴任で、市街地の高級ホテルかマンションに住み、3~5年ぐらいで帰国する前提で来ている。それに対して、韓国企業の場合は、家族帯同で来る場合が多く、特に中小企業の場合は社長自ら骨を埋める覚悟で来ている。そのうえ韓国企業は青島、天津、瀋陽など特定地域に集中しているので、各地域にかなりの規模の韓国人コミュニティができており、例えば青島市では韓国人人口が4万人と、日本人人口の100倍にも及んでいるという。

 中国進出以外に生き延びる道はないと覚悟を決めてきている韓国の中小企業に比べて切迫感が足りない日本の中小企業の将来を著者は危惧している。

 地域経済をどう発展させるかという問いが本書を貫く主題である。著者は経済発展を「うねり」と表現し、「環渤海、環黄海の『うねり』が済南を前衛として中国国内に浸透していくこと」を期待している。だが、地域経済の発展は、海のうねりのように一つの地域から隣接地域に波及するものなのだろうか。広東省に隣接する湖南省がそれほど発展していないことが示すように、必ずしもそうではない。逆に、温州市のように隣接地域とは全く無関係に自ら「うねり」の震源地になる地域もある。

中国における地域経済発展の論理について、もっと突っ込んだ議論が必要だと感じた。

 本書は中国の地域発展に関して、改革以前は省ごとのフルセット主義だったが、改革以後、カラーTVなど新たな製品群では沿海の拠点地域への集中傾向が見られると総括している。だが、工業全体でみても、産業別でみても、改革以後1990年頃まではむしろ分散化が進んだのであり、90年代に入って発展の格差や特色が際だつようになってきた。中国の地域発展戦略を考えるためにも、まずそうした分散化から集中化への転換がなぜ起きたのかを分析する必要があると感じた。

 

(丸川知雄 東京大学社会科学研究所助教授)