社研セミナー

「日本の中学校における移民の子どものライフチャンス」
石田 賢示(社会科学研究所)

日時:2016年7月12日 15時00分-16時40分
場所:センター会議室(赤門総合研究棟5F)

報告要旨

 日本に定住する外国人、いわゆる移民(両者の定義は必ずしも一致しない)の相対的な人口規模はいまだ小さいものの、時系列的には約半世紀の間に2倍以上に拡大している。子どもを持つ彼らの多くは、日本社会のなかで子どもを育てることになる。様々な研究が示す通り、学齢期における学校教育上の成功・達成はその後の社会経済的地位達成の重要な資源、言い換えれば生活機会(ライフチャンス)となる。
 この点について国内外の先行研究がしばしば指摘するように、移民の子どもは学校生活において様々な困難に直面している。移民の子どもの困難の背景を実証的に明らかにすることは学術的にも社会的にも重要な課題となりうるが、日本社会における移民人口の規模の小ささもあって、これまで統計データによる実証分析はあまり蓄積されてこなかった。質的研究も含め先行研究の知見を踏まえつつ、移民の子どものライフチャンスと様々な背景要因の関連を同時に、また適切に評価するには、計量分析による検討がより望ましいといえる。
 そこで本研究では、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)の中学2年生(第8学年)データを用いて、移民の同化(assimilation)に着目した実証分析をおこなう。同調査では数学、理科の得点だけでなく、進学期待や学校に対する態度、また学校におけるいじめ被害(peer victimization)についても質問がなされており、学校教育上のライフチャンスの様々な側面について移民第一世代、第二世代、ネイティブ間での比較が可能となる。分析の結果、数学や理科の学力達成では一般的な同化論に沿った傾向があるものの、その他の指標については同化論の枠組みではとらえにくいことが明らかになった。知見を総合し、日本社会における移民の子どもの同化とライフチャンスの関連について、複雑な面のあることを論じたい。

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