研究目的

東京大学社会科学研究所現代中国研究拠点 目的と意義

すでにGDPの規模において日本を抜いた中国が今後も2桁近い経済成長率を維持できるとすれば、アメリカに追いつき追い越す日も遠くない将来に到来しよう。そうした経済成長を維持するために必要となる資源の量は厖大であり、中国のみならず世界が直面する地球環境面での制約は、今日以上に厳しいものとなろう。

21世紀に入って以降の中国は「経済構造の戦略的調整」、「経済成長方式の転換」を目指し、投資および輸出主導型経済よりの脱却をはかってきた。しかし四川大地震や北京オリンピック、リーマンショックや上海万博を経た今日、改めて「経済発展方式の転換」を加速せざるを得ない状況にある。

中国の重工業化は日本に続く形で20世紀の戦間期に始まり、人民共和国期の1950年代にはソ連型の中央集権的な計画経済モデルによる重工業発展が試みられた。しかし冷戦下の中国は地方主導の重工業化にシフトし、1980年代以降の移行経済期には地方分権と軽工業優先政策への転換が意図され、市場経済化・対外開放がすすんだ。沿海部において輸出主導型の経済発展が顕著に進展する一方、内陸部においても引き続き地方主導による工業発展がみられ、基幹産業における産業組織の地方分散化がすすんだ。産業構造・産業組織の調整、サステイナブルな発展が引き続き中国で主張される背景には、こうした歴史的かつ構造的な発展メカニズムが存在する。

東京大学社会科学研究所現代中国研究拠点では第1期の5年間に、中国・東アジアの工業化、対外経済関係の変化に着目し、長期にわたる経済発展の比較分析を行う一方、ハイテク産業やソフトウエア産業の今日的かつ同時代的な展開・集積、経済法制度の整備、対ASEANをはじめとする対外経済関係、対アフリカを中心とするオフショア資源開発等について調査研究を重ねてきた。また、こうした産業の展開と連動した中国の対外援助政策について、アフリカやASEAN諸国、さらには中南米諸国との経済協力などについて実地調査をおこなった。

現代中国地域研究第2期事業においてはこうした基礎の上に、中国・東アジアの産業発展、産業構造にかかわる産業組織論、産業立地論、比較制度分析、エネルギー経済、農業経済学、産業社会学などの社会経済諸学、さらには歴史的な中央・地方関係にかかわる財政学、行政学、行政法、対外経済関係にかかわる国際経済、国際関係論、国際政治学など関連諸分野の学知を結集し、中国の経済システムに特徴的な歴史的制度的なバイアス、資源開発を含む中国の当面する国際経済関係を踏まえ、21世紀の中国における「経済発展方式の転換」の可能性について、実体経済に即した実証的かつ学際的な研究を推進する。また、その中国の経済発展方式の転換の可能性が、世界経済に与える影響、そして対外援助やそれにまつわる投資の在り方の問題などを、現地社会の視点をとりいれながら検討し、世界経済や援助をめぐる秩序変容についても、あわせて検討するものである。