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社研卒業生の現在(いま)

相澤美智子さん

現在、一橋大学大学院法学研究科でご活躍の相澤美智子さんに、社研在籍当時や最近のご様子についてお話を伺いました。

相澤美智子さん
プロフィール

相澤 美智子(あいざわ みちこ)

一橋大学大学院法学研究科(准教授)
専門分野:労働法

社研在職期間:2001年4月~2004年3月

助手

 私が社研に職を得たキッカケは、2000年10月のある日に、高校の同級生からもらった1通のメールでした。差出人は、「上ちゃん」こと上村泰裕君(名古屋大学准教授、社会学専攻)。彼と私は、高校時代、合唱部の仲間でした。卒業後、コンスタントに連絡を取り合うことはしていませんでしたが、なぜかその年は、上ちゃんが合唱部のメーリングリストを通して、社研・助手に採用されたと自分の近況報告をしてきたのです。私は、すぐに「おめでとう!」と祝福するとともに、「何か良い公募情報を見たら、教えてください」というお願いの言葉も添えました。びっくりしたのは、2か月後、上ちゃんが本当に公募関係のメールをしてきてくれたことです。「社研が、今度は法律系の助手の公募をしています」という情報でした!大急ぎで書類や論文を整え、応募しました。書類・論文選考を経て、面接に進み、法律・政治系の先生方にぐるりと取り囲まれて1時間も受け答えしたときには、とても緊張しました。最終的に採用が決まったときには、「これで当面(3年)は安心して研究を続けられる」と安堵するとともに、上ちゃんに心から感謝しました。

 私は、かねてより、カリフォルニア大学バークレー校ロースクールにいらした雇用差別禁止法の専門家であるリンダ・クリーガー教授(現在、ハワイ大学ロースクール教授)の研究に注目し、いずれリンダの下で研究を進めたいと思っていました。その念願がかなったのは、社研奉職の2年目のことでした。2002年の夏から翌年夏まで、バークレーで過ごしました。この1年間、私はリンダと毎週数時間にわたり雇用差別禁止法について議論しました。彼女から、アメリカの雇用差別禁止法についてたくさんのことを教えていただくとともに、私も日本の雇用差別禁止法に関する情報を発信しました。自分の国とその法律についての考察を、相手国とその法律との比較の観点から深めうるような議論ができたかと思います。

『雇用差別への法的挑戦―アメリカの経験・日本への示唆―』

 しかし、その議論をまとめる私の能力と時間が不足していたことから、アメリカから帰国して約半年後に提出しなければならなかった助手論文には、議論の半分も反映させられませんでした。留学の成果を活字にするには、その後、約10年の時間を要しました(『雇用差別への法的挑戦―アメリカの経験・日本への示唆―』創文社、2012年)。2004年に一橋大学に就職してからは、講義・ゼミを担当するようになり、2009年には娘を出産し、育児にも時間をとられるようになったからです。研究時間の捻出には本当に苦労しました。こうして、娘の出産よりもはるかに難産な著作でしたが、大変光栄なことに、いくつもの書評をいただいたばかりか、2013年には西尾学術奨励賞を受賞いたしました。家族の協力がなければ達成できなかったことであり、皆で祝杯をあげました。

 現在の私の研究上の目標は、上記著作の続編ともいうべき一書を作ることです。日本社会の社会科学的認識に基づいた雇用差別禁止法に関する立法論および解釈論を展開すること、とでも言いましょうか。「日本社会の社会科学的認識に基づいた」とは、換言すれば、「自国の歴史的・文化的特徴を踏まえて」ということになりますが、己を知ることが難しいように、自国のことを知るのは容易ではありません。リンダとの議論を通して与えられた課題のうち、いまだ十分に果たしえていない部分はそこにあります。この「宿題」を何とかやりおおせて、いつの日かリンダに日本研究の成果を報告できたら、と思っております。

次の著作に向けて、研鑽を積まれる傍ら、ピアノ演奏も玄人裸足ですね。今後のますますのご活躍をお祈りしております。今日はありがとうございました。

(2015年12月25日掲載)

最近、嬉しかったことは何ですか?
リサイタル

 私の最大の趣味はクラシック音楽です。ピアノをずっと続けており、普段は研究の息抜きに弾くのですが、演奏会を目前にすると、かなり「追究」します。日本法制史の大家で、アマチュアにしておくのがもったいないほどヴァイオリンがお上手な水林彪先生(現在、早稲田大学教授)とは、一橋大学の同僚として出会った直後からヴァイオリンとピアノのデュオを楽しむようになり、2009年にはアマチュア室内楽フェスティバルに応募、170組のアンサンブルの中から20組しか選ばれない審査に合格し、さらにその20組の中で1組にしか与えられない「みなとみらい賞」を受賞し、みなとみらい小ホールでのリサイタル開催特典を与えられました。写真は、2012年9月18日、水林先生と共に開催したみなとみらい小ホールでのリサイタルの様子です。モーツァルト、ブラームス、フランクのソナタを演奏し、生涯の思い出になるような、素敵な演奏会となりました。

(写真:2012年9月18日リサイタル)

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