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Regional variations in labor force behavior of women in Japan

報告要旨

女性の就業率には、男性よりもはるかに大きな地域差がある。日本の女性の労働力率は継続的に上昇してきたものの、2000年代後半におけるクロスセクションの労働力率プロファイルはまだ、いわゆるM字型をしている。女性は結婚・出産の時期に労働力から退出し、40歳代以降に再参入することが多い。

しかし実は、女性の労働供給には大きな地域差がある。就業率プロファイルの形状は日本国内の地域間で大きく異なり、就業率は日本海側地域(山形、新潟、富山、石川、福井、鳥取、島根)で、他地域よりもかなり高くなっている。25−54歳の女性の就業率は東京で62パーセントだが、日本海側地域では77パーセントだった(2007年就業構造基本調査)。日本海側地域におけるこの高い就業率は、子どもを持つ有配偶女性が正社員として就業する割合が高いことに起因しており、有配偶女性のパート就業や、無配偶女性の就業の地域差は小さい。日本では仕事と家庭の両立が難しいと考えられているが、日本海側地域では、女性がこのことをもっともチャレンジングな方法で実現している。すなわち、家庭責任が最も高い女性(子供を持つ有配偶女性)が、正規雇用の仕事(労働時間の自由度が少ない仕事)に従事しているのである。

本稿では、観察可能な需要・供給要因(祖父母との同居、保育資源の多寡、男性の収入、産業構造)が、女性就業の地域差を説明するかどうかを、2007年のクロスセクションデータにより検証する。回帰分析の結果によると、需要と供給要因は地域差の一部を説明するが、それらをコントロールした後にも地域差は残る。 1955年から1975年までのデータは、産業構造が農業から製造業とサービス業に転換した時期にあっても、日本海側地域の女性の就業率は継続して高かったことを示す。このことは、女性の仕事に関する規範が、女性就業の高さの根源的要因であることを示唆する。

          
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