研究活動

プロジェクトセミナー

都市は国家を超えるか−大阪に見る大都市のガバナンス

報告要旨

「大阪都構想」を掲げて,2011年11月の大阪府知事・大阪市長選挙に勝利した橋下徹氏と大阪維新の会は,今や国政レベルでも政党の再編と関連付けられて注目される存在となっている。その政治手法については批判がなされることも少なくないが,橋下氏が取り上げた大都市制度の問題は,戦前から長きに渡って議論されつつも,半ば棚上げされるようなかたちで現在に至っている問題である。しかも,近年の政治的・社会的な変化の中で,その議論が要請されている問題であることは間違いない。
本報告では,まず戦前からの大都市制度に関する行政的・財政的な議論を整理し,大阪を中心とした大都市に特有の政治状況を分析する。単一国家である日本において,大都市という地方制度に「例外」を迫る存在は,常に扱いにくいものであった。しかも,大都市において先鋭化する都市問題は,国家に対して批判的な政治勢力を伸張させる契機でもあった。しかし,戦前の大都市制度の議論は戦争を前にして失速し,戦後においては政令指定都市制度が導入されて部分的な特例は認められたものの,大都市は長らく他の市町村と同列の道府県に属する普通の都市とされて,大都市制度の問題は封印されてきた。
1990年代からの選挙制度改革と地方分権改革による日本政治の変化は,大都市の位置づけを大きく変えようとしている。90年代の政治変化によって政党の再編成が促され,都市部と農村部の経済格差の問題が顕在化する中で,争点として大都市制度の問題が浮上する環境が整うことになり,「大阪維新の会」を中心とした地方政党の出現もその流れの中で理解することができる。本報告では,このような90年代の政治変化を踏まえて現在の大都市制度の問題を議論した上で,今後の大都市制度のあり方について考える枠組みを提供したい。

          
このページの先頭へ