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日本の財政統治―成果と挑戦

報告要旨

日本の統治は陰鬱な時代に入った。 一連の行政改革と長きにわたり期待された政権交代にも関わらず、4人連続の首相が短命に終わり、現在の菅内閣も震災, 津波、原発事故、復旧復興に対応する能力が不足しているとの認識が広く共有されている。その背景に、日本の継続する財政赤字問題と世界一の累積国債残高が迫っている。ギリシャ、アイルランド等の金融,財政危機に目を向ければ、あたかも民主政治の破綻といった惨状である。

少子高齢化、低い経済成長率の影響の下で、日本の財政が非常に厳しい状況に置かれていることは確かであるが、過去10年間の日本の政治体制は一般に理解されているよりも遥かに対応能力が高かった。財政支出の重点は個別的な「利益誘導型」項目から準公共財的な「公約型」項目に移ってきた。消費税等の税率の引き上げについても、政党間の合意が徐々に形成されつつあり、問題はいつ導入するかだろう。

欧米・豪州など、経済先進国の戦後財政史を振り返れば、しばしば外的な衝撃を受けることがあっても、中期的には均衡を回復する能力が(予想されるよりも)高い。必要であれば、税率を引き上げることも可能である。欧州の財政事情に関する最新の研究成果によれば、財政回復を果たした国々は主に二つの方法を用いている。財務省に対する委任 (delegation)と政党間の協定/合意 (partisan pacts)である。 日本では、自民党政権の下で委任が多く利用されたが、今後はどのような方法が最適であろうか?どのような問題を克服しなければならないだろうか?このような問題を検討する為に、6つのトピックを取り上げたい。

1. 自民党支配の時代から残された問題
2. 金融財政危機の経験の有無
3. 有権者、政党間のイデオロギー的距離
4. 定数是正と市町村合併
5. 二院制と捻れ国会
6. 選挙の頻度と財政再建の関係

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