研究活動

プロジェクトセミナー

個別自治体研究のいくつかの試み

報告要旨

  自治体研究は学際的なものであるが、報告者が行うのは行政学の観点からに限定される自治体行政学である。戦後日本の広義政治学におけるいびつな分業関係から、行政学が自治体政治学・地方政治学を長らく所掌してきたが、そのようなデマケは近年急速に是正されつつあり、それは非常に望ましいことである。こうして限定された自治体行政学であっても、自治制度論と自治体運営論という2つの相当に異なる所掌範囲が形成されてきた。ところが、これらの自治体行政学の2つの所掌は、実は、いずれもが、自治体総体(個体群)に関する研究である。自治制度論は、通常は一国ごとの制度を丹念に制度内在的な論理を追究するものであるが、その性格ゆえに、対象は国レベルの法制の解説および制定改廃の政治行政過程の分析となり、実は国政研究であって、自治体研究でありながら自治体を研究しないという特徴がある。また、自治体運営論は、個々の自治体を採り上げるというよりは、一国の自治運営の全体的な趨勢(平均(横並び)的動向や「先進的」方向性など)を探るものであり、これも個別の自治体を研究しないという特徴がある。自治体運営論のなかでの個別自治体の研究は、あくまで、事例研究(先進・失敗事例紹介、理論検証事例など)として位置づけられるにすぎない。事例研究では、事例選択の根拠や少数事例の限界に対する冗長な能書きと弁明が必要であり、研究者も読者も辟易とするものである。しかしながら、個別自治体は単なる「事例」であるとは限らず、唯一性・代替不能性・個別性を持った存在でもあり、自治体行政学は、そうした対象の特性にも配慮する必要があると思われる。そのため、個別自治体(行政学)研究においては、「事例性」とは別世界での研究の可能性もあると思われる。そうした観点に立って、個別自治体研究のいくつかの試みを紹介して、ご批判を仰ぎたい。

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