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ガバナンスの理論的諸問題:厚生・規範・道徳

報告要旨

 本報告では,経済理論におけるガバナンスに関連した研究を,事実解明的観点と規範的観点のそれぞれより検討する.ガバナンスの事実解明的研究では,「あるガバナンスのメカニズムを前提としてどのような資源配分が達成されるか」という問いを出発点として,「ある社会においてガバナンスのメカニズム自体がどのように形成されていくのか」が問題となる.一方,ガバナンスの規範的研究では,「ガバナンスを評価するための社会厚生・福祉とは何か」を検討したうえで,「人間の善き生を達成するためにどのようなガバナンス制度を設計するべきか」が問われる.  まず,合理的個人の前提もとでの,事実解明的研究と規範的研究の基本的課題を明らかにする.事実解明的研究の基本課題としては,自生的秩序と政府の機能が論じられる.規範的研究の基本的課題として,ベンサム流の功利主義を批判的に検討しながら厚生評価の方法について考察される.次に,個人の従うところの社会規範・道徳や個人のアイデンティティなどの形成が,どのようにガバナンスの二つの研究と関わってくるのかについて論じる.さらに,マルキ・ド・コンドルセの論考を嚆矢としてケネス・アローによって完成される社会的選択理論を通じて,巨大なガバナンスのメカニズムとしての民主主義の意義と問題点を概観する.最後に,事実解明的研究と規範的研究の二分法を批判的に検討する.

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