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諮問委員会

第3回 諮問委員会議事要旨

Ⅰ.諮問委員会の開催日時および出席者


日時 2010年3月30日(火)15:00〜17:00
場所 社会科学研究所第一会議室
出席者 (諮問委員 あいうえお順)
淡路剛久 委員 (早稲田大学大学院法務研究科教授)
絵所秀紀 委員 (法政大学経済学部教授)
馬場公彦 委員 (岩波書店編集部)
平野浩 委員 (学習院大学法学部教授)
間宮陽介 委員 (京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
列席者 (社会科学研究所)
末廣昭 所長
中村圭介 副所長
平島健司 協議員
佐藤岩夫 協議員
佐藤博樹 センター運営委員会委員長
米谷栄治 事務長
門馬清仁 総務チームリーダー(記録)

 議事に先立ち、末廣所長から、出席者紹介、本会の趣旨説明、配付資料説明があったのち、議事進行者に絵所委員が互選された。

 まず、末廣所長から、資料2に基づき、第2回諮問委員会で議論された4つの論点−①社研の対外イメージと広報活動。②法人評価対応。③組織的な研究と個人研究と関係。④社研のブランド・アイデンティティ。−について説明があり、これらに対する社研の取り組みとして、2009年度の活動報告があった。

 次いで、各委員から、次のとおり意見等があった。

Ⅱ.2009年度報告、今後の方向性、配布資料を受けて各委員からの意見・感想等


1.広報活動について

● 研究所における広報の対象は一体誰だれかということを考えたとき、それは学生でも一般人でもなく、やはり研究者であると思う。研究者向けの広報活動に限定し、知る人ぞ知る社研でもいいのではないか?

● 大学も研究所もグローバルな競争の時代の中に入っているので、研究者だけを対象に広報するのではなく、広く一般に向けた広報は必要だと思う。「希望学」の例を見ても、社研がどのような研究をしていて、どのような業績をあげているのかを広報するのは必要である。

● 研究業績については、定期刊行物をリポジトリ形式でWeb公開するのが一般化しているが、京大ではその部局別アクセスランキングを集計している。

● 研究所のアイデンティティのどの部分をどういう対象にアピールするのかが明確にあるとよいと思う。例えば、「希望学」は、社研が行っているプロジェクトとして認知度が高いが、「希望学」は社研のアイデンティティとどう結びついていて、社研の本質的な部分(どういう組織でどういうことをやっているのが社研かという部分)をどう表現しているのが「希望学」なのかが見えてこない。

● 出版物からすると、これまでの全所的プロジェクトの成果物のうち、「20世紀システム」「現代日本社会」「失われた10年」などのシリーズは、社研アイデンティティと結びつくものであり、「希望学」もそうである。しかし、「希望学」は、従来のプロジェクトとは違って、広報の仕方、立ち上げ方、地域密着型の研究発信というスタイルが上手かった。

● 研究発信をする出版は、商業性で認知度を高めるより、国際的評価あるSSJJのように、アカデミックなところに足をおいて、そこからしっかり発信していく方が良いと思う。日本の優れた社会科学の研究が社研にくると見ることができるというくらい、世界に知られるのが大事ではないか。

(社研)広報の対象については、1回目の諮問委員会から継続して議論されている。例年、研究所年報を発行しているが、広報の役割は盛り込まない方針とした。一般向けと研究者向けの広報を切り分け、アピールの仕方は、プロの広報ライターに協力してもらわざるを得ないと考えている。

● 研究所年報は、評価材料としても必要であるので、今後も作らざるを得ないと思う。ただし、海外発信も必要だ。総合社会科学をやっているところは希少であるし、日本研究の中心でもあるので、研究者向けとしても重要であるが、一般来訪者向けとして用意しておいても悪くはない。

2.全所的プロジェクト

● 社研は、様々な領域の人事をバランスよく配置するという方針でやってきているが、ある領域の専門家から見た場合、その専門とする個別研究は別として、全体研究・共同研究というものがどういう特徴をもっているのかが解らない。「希望学」シリーズは、抽象的なコンセプトを立てて、様々な領域により、切り口の見せ方によってアプローチしている。シリーズとしてつながっているのかどうか疑問であるが、異なる領域の研究者があつまって、同じコンセプトを取り上げるのはどういう方法があるのかというのを試行したものだと思う。一方、次期全所的プロジェクトのうち「ローカル・ガバナンス」は市町村合併を終えた昨今の諸問題を様々な領域−「希望学」よりも近い専門領域−から展開が可能であり、「福井調査」との連動も大いに期待できる。

● 「希望学」シリーズを専門領域からみた評価はどうなのか? “学”とした以上、学問としてどう構築するのかを見せるべきだったのではないか? 社研として学問体系の方向性を示すのも重要ではないか。

● 「総合知の追求」とあるが、総合知をだすのは難しい。GCOEなどのように単発的な学際的プロジェクトは多々あるが、社研はそれを組織としてやっているのが強みになるのではないか。

● 社会科学の中で経済学は、昔は歴史研究とくっついていたが、今では、データ処理とかジャーナル文化に様変わりし、30代の研究者が本を読まなくなった。「希望学」シリーズが面白くないのは、そういう時代を反映しているのではないか。

(社研)現在、シリーズものの出版交渉をすると出版社側が抵抗を示す。サンドイッチ方式など見せ方を考える必要がある。コンセプトというより著者の繋がりで出している面もある。

● 広報の対象は誰なのかという話と同じことが出版物についても言えると思う。研究成果の発信先は誰なのか?今は学生というより若者向けという感じになってきている。社研も学問的性格を見据えずに、こうした風潮に乗りすぎると、社研のブランド・アイデンティティとアピールが一致しなくなるのではないか。

● 法人化後の大学は、プロジェクトの山で、個人研究をしっかりできない状況である。

● 学術情報のリポリトジー化の進展に合わせて、フリーなオープンユースになってしまったため、個人研究の成果を出版しても買い手がいない。学術関連の出版界としては、むしろ“知”をブレンドしたものを見せるというような、見せ方をプロデュースすることで生き残るしかない。

3.研究体制

● 中国研究については、中国を研究する目的や戦略的な目標はなにか?

(社研)中国研究の中で中国経済をやっている研究者はあまりいない。「地域研究」なのか「ディシプリン+地域」なのか、ロシア・東欧・中国などの地域を研究する研究者の補充・育成が問題となっている。

● 大学において文学部とか法学部というような、いわゆる“一文字(ひともじ)学部”はイメージが強い、社研はこうした分野との差を示すために、多分野のグループ化を進めているが、“学”の中間を狙いすぎるとイメージが伴わないと思う。

● 社研の人事政策として、各ディシプリンをバランスよく配置し、社会科学全体をカバーしようとしている。ところが、特徴を出そうとすると、全所的プロジェクトや共同研究にならざるを得ない。そうするとテーマ設定が難しくなる。こうした部分にどうしても矛盾がでてくる。中核的な研究分野と時代に応じた変動的な研究分野を社研として自己完結型でやっていくのか、あるいは、社研は中核的な研究分野だけにして、変動的な研究は外部研究者との共同で展開していくのか。時代の要請に応じたテーマ設定に対する取り組み方が、社研の人事政策では見えてこない。さきほどの中国研究者の育成にしても、その辺に問題があるのでは。

● 自己完結型の全所的プロジェクトでは、アプローチの仕方がしやすいテーマ設定になってしまう。こうした戦略的な社研の取り組みが、学問領域から貢献しているかというと、必ずしもそうではない気がする。

(社研)社研は基本的には個人としてその専門分野の優れた人材を採用している。そうした研究者が社研の全所的プロジェクトに参加することによって、その専門分野のテーマが広がるという効果がある。その意味で「希望学」は“学”としての確立や“総合知”が出せなかったかもしれないが、このプロジェクトへの参加により個人の専門性が広がったことは、結果的に成功したと思っている。

● プロジェクトに参加している人たちは、個人の領域が広がって面白いかもしれないが、それで社会的評価が得られるのか?

● 専門分野が完成されたテニュア研究者が集まって総合知を出すのは難しい。学際的なプロジェクトに参加させるのは、むしろ専門分野が確立していない若手研究者に自由にやらせた方がよいのではないか。そのなかから古典的な分野で専門性を確立していく人もでるだろうし、このように考えると、学際的なプロジェクトは教育機能的なところに総合知に対する貢献があるのではないか。

● 現在の学生や若手研究者の論文は、ネットでキーワード検索して執筆するというスタイルになってきている。世界の研究者に対する発信という意味においても、研究成果のアウトプットを電子化するのがよい。

● 収入構造からすると外部資金の割合が高くなっている。このことは研究の構造にも影響をあたえているのではないか。社研の伝統は、宇野弘蔵のような個人研究の蓄積にある。外部資金=共同研究であり、他律的な研究構造になっていくことを危惧する。

(社研)研究スタイルやテーマの違いにもよる。理論研究は個人研究でもできるが、実証的な社会調査はやはり共同で行う研究で、ある程度の予算も必要となる。そうした研究が増えてきている。

4.社会調査・データアーカイブ研究センター

● データ寄託側からの要望として、科研費で行った調査データについては、迅速かつ国際的公表が求められている。特に、外国におけるデータ利用頻度は、次のプロジェクト申請時の評価指標にもなる。データセットの件数は今後も増えていくだろうが、対応できるような体制整備をお願いしたい。

(社研)現在は、27名体制であるが、そのうち正規教員ポストが6で、それ以外は、所内兼任、特任助教、特任研究員、RAなどで支えられている状況である。また、センターの拠点化に伴う予算は、基盤整備のみで、新規事業は措置されなかった。

4.その他

● 次期プロジェクト「ガバナンスを問い直す」において、3つのテーマを挙げているが、3つとも全部やろうとしない方がよいと思う。

(社研)次期プロジェクト「ガバナンスを問い直す」において、3つのテーマを挙げたのは、決してバラバラではなく、共通の課題とアプローチの方法が可能であると考えている。全所的プロジェクトとGCOEなどのような学際プロジェクトとの違いは、2つある。1つは、継続性(連続性)である。全所的プロジェクトは現代日本社会を継続的に観察してきているものである。「希望学」も“希望の喪失”という現代日本社会が抱える問題を取り上げたものと言える。もう1つは、総合性である。組織的ミッションとして様々な切り口があり、様々な分析できるという総括的な特性をどう活かすのかが課題である。

● ガバナンスのある領域にかかる実証的な分析が目的なのか、総論的にガバナンスというコンセプトを対象として各専門領域から分析するのが目的なのか、どちらに関心を置くかで違うと思う。

● 民間において宣伝費は一般にプロジェクトの10 %としている。広報活動の費用の効果を可視化できれば、効果的な配分が可能となると思う。

○社研のイメージを対外的に打ち出すためには、データ集のようなものを継続的に編集、刊行していくという方法もある。

配付資料

  • 年報2009年版(事前郵送)
  • 概念図 社会科学研究所の「3つの柱」と国際化の推進
  • 資料1 2009年度の社会科学研究所の主な活動と改善点
        第2回諮問委員会での議論を受けて
  • 資料2 東京大学社会科学研究所第2回諮問委員会(2009年4月6日)での議論
  • 資料3 2009年度社会科学研究所の活動
  • 資料4 社会科学研究所の各種事業に関わる活動単位と人員
  • 資料5 社会科学研究所の行動シナリオ
  • 資料6 社会科学研究所の国際化推進長期構想
  • 資料7 外国人客員教授、客員研究員の推移
  • 資料8 社会科学研究所の助教・特任研究員等の就職状況
  • 資料9 社会科学研究所の財政(収入)構造
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